【新日本】ゲイブが涙と感謝の棚橋超えでGLOBAL王座初防衛 「タナハシさん、愛してま〜す!」 2025/7/4

『NEW JAPAN SOUL 2025』東京武道館(2025年7月4日)
IWGP GLOBALヘビー級選手権試合 ○ゲイブ・キッドvs棚橋弘至×

 ゲイブが全力の棚橋を引き出した上で勝利をもぎ取り、GLOBAL王座初防衛に成功。涙ながらに棚橋への感謝を語り、「タナハシさん、愛してま〜す!」と日本語で叫んでみせた。

 ゲイブは6・9大阪城大会でGLOBAL王者の辻陽太に挑戦。2・11大阪大会でのタイトルマッチは両者KOの熱戦ドローに終わっており、今回が再戦となったが、激闘の末に辻を破り、GLOBAL王座初戴冠を果たした。試合後、ゲイブはリング上で次期挑戦者に棚橋を指名。棚橋も対戦に同意し、東京武道館大会のメインで両雄が激突することになった。

 棚橋がGLOBAL王座に挑むのは、2024年5月のニック・ネメス戦以来2度目。引退前最後のG1出場も控えており、GLOBAL王座初戴冠を狙う構え。そんな逸材をゲイブは真っ向から迎え撃った。

 タイトルマッチらしく静かな立ち上がりとなったが、この試合に「100%の棚橋」を求めるゲイブはマウントポジションから「コイヨ!」と叫び、握り拳を作って挑発。棚橋も声を荒げたものの、物足りない様子のゲイブはビンタ、ナックルパンチで叩きのめした。止めに入る海野レフェリーを突き飛ばすと、棚橋をバックドロップでぶん投げる。その後も逆水平を連打し、ショートレンジラリアットを振り抜くと、棚橋は前のめりに崩れ落ちた。客席からは「棚橋」コールが巻き起こったものの、ゲイブは一方的に攻撃を重ね、コーナーに上がるとエアギターをかき鳴らす。

 ゲイブはスリーパーで絞め上げると、ここでも何度も罵声を浴びせた。すると、棚橋は不意を突くチンクラッシャーで反撃開始。フライングフォアアームから雄叫びを上げる。得意のドラゴンスクリュー、ダイブ式サマーソルトドロップ、ツイスト&シャウトも繰り出した。コーナーに上がると、追いすがったゲイブは頭突きを決めるも、逸材はビンタで場外まで叩き落とし、大一番でしか見せない捨て身のハイフライフローアタックを敢行。場内には「棚橋」コールがこだました。

 棚橋は普段出さない鉄柵へのホイップ連発で追い討ち。鉄柵を挟んだ状態で、さらにはロープを挟んだ状態でドラゴンスクリューを繰り出した。ゲイブも打撃戦からエクスプロイダー、垂直落下式ブレーンバスターと大技ラッシュ。棚橋ばりに指を突き上げ、スリングブレイドを決めると、掟破りの逆ハイフライフローで突っ込んだ。だが、棚橋はこれを避けて自爆させると、ヒザを強打したゲイブに低空ドロップキック、ドラゴンスクリューとたたみかけ、急角度のテキサスクローバーホールドでギブアップを迫る。

 ゲイブがしのいでも、棚橋はスリングブレイドをズバリ。絶叫して立ち上がったゲイブをダルマ式ジャーマンで投げ飛ばした。そして、コーナーに上がると、ハイフライフローを投下。完璧に決まったものの、ゲイブは肩を上げる。ならばと棚橋は再度ハイフライフローを放つが、ゲイブに避けられて痛恨の自爆に。ゲイブは生ヒザ式ランニングニーをズバリ。さらに、強烈なラリアットを振り抜くが、棚橋はカウント1でキックアウトしてみせる。だが、ゲイブは再びランニングニーをぶち込むと、パイルドライバーで真っ逆さまに突き刺した。

 「棚橋」コールの中で懸命に立ち上がった棚橋に対して、ゲイブはビンタを連打。「コイ、シャチョウ!」と吠えると、棚橋もビンタで張り倒してみせる。ゲイブのバックドロップに対して、棚橋はドラゴンスープレックスで譲らず。スリングブレイドを繰り出すと、大歓声の中でハイフライフローアタックを発射した。だが、ゲイブはこれをビンタで迎撃すると、レッグトラップパイルドライバーをズバリ。粘る棚橋を仕留めた。

 全力全開の棚橋を返り討ちにしてゲイブがGLOBAL王座V1に成功。3カウントが入った瞬間、ゲイブは感極まった表情でそのまま棚橋に抱きつく。「ゲイブ」コールを受けたゲイブはマイクを持つと、「個人的な話をしないといけない」と切り出し、日本語で「2022年、俺はメッチャ精神的病気で。1時間2時間、棚橋さんはFaceTimeで(話してくれた)」と明かして涙を流し始めた。

 そして、英語で「棚橋さんがいなかったら生きてなかったかもしれない。だからこのファイナルロードの一戦をここ東京でできたことを心から嬉しく思う」と試合を振り返ると、再び日本語で「棚橋さん、まだ6ヵ月。プロレス人生。あと社長人生頑張って」と激励。「新日本プロレス、ゲイブ・キッド、大丈夫だ。新日本プロレス、トップに行く!」と宣言すると、「最後、タナハシさん、愛してま〜す」とメッセージを送り、座礼して敬意をあらわした。

 これを聞いた棚橋も思わず涙。ゲイブは英語で「まだやらないといけないことがあるし、勝たないといけない相手もいる。でも約束する。俺の体も人生も新日本プロレスに捧げる。100%、500%、1000%、いつも新日本プロレスイチバン!」と新日本プロレスの愛を叫ぶ。そして、「俺はG1決勝へ行く。G1覇者になるぞ。今年のG1 CLIMAXチャンピオンはゲイブ・キッドだ! 以上!」と次なる目標にG1獲りを掲げてみせた。ゲイブは大歓声を受けると、最後に再び座礼を見せて、東京武道館大会を締めくくった。

 一方、セコンドの肩を借りてコメントスペースにやってきた棚橋は大の字に。そのままの体勢で「俺が彼に出会ったのはもう何年も前のことで、自分の引退という時間軸、早いと思ってたけど、それ以上に周りの若い選手の成長が頼もしくもあり、悔しくもあり、悲しくもあり…」と複雑な心境を吐露。それでも最後は「まだ俺のプロレスラーとしての炎は消えてないってことだから。最後の最後、最後のその日になるまで、残り1秒になるまで頑張ります」と今後も続く引退ロードを見据えていた。

【ゲイブの話】「(※スタッフに対して)コレ(グローバル王座)を綺麗に置いてくれないか? アリガトウ。俺はこの瞬間を復帰した3年前から考えてきた。まるでおとぎ話のようなもので、感傷的になりすぎた。性格が丸くなったと言われるけど、どうでもいい。俺は夢の人生を築き上げたんだ。リングで言ったことは本心だ。病気の時、ヒロシ・タナハシが毎日FaceTimeをしてくれなかったら俺は生きていなかったかもしれない。俺が意味不明なことばかり言っていた時だ。アイツは新日本を救った男だ。2008年、新日本を救った。俺が新日本にいたのもちょうど新日本が最も厳しい状況にあったコロナ禍の時だ。道場に1年半いて、俺は常に自分が棚橋のレベルまで到達できると思っていた。他のヤツらに何を言われても、自分が置かれた立場がどうであれ、俺はトップまで行けると信じてた。そして実際、成し遂げた。自分の力で。もちろん仲間たちのサポートもあってこそのことだ。それに加えてビジョンを持つ必要がある。人生を変えたいのであれば、何もせずに泣いているだけじゃダメだ。俺も退院した後がそうだった。それでどうなった? 何も起きなかった。キャリアは停滞して、他のこともうまくいかなかった。時間は止まらないんだ。誰のためであっても、時間は止まらない。だから何かが欲しければ、情熱と目的を持って行動に移さないといけない。実際、俺は長い間人生をムダにしていた。出来ることはわかっていたのに、自信がなくて、いつ爆発するか分からない危険な状況だった。そしてどうだ? たった今俺はエースを倒した。新日本プロレスと聞いたら話題に上がる男だ。そいつに俺は勝ったんだ。正直、俺は今自信に満ちている。倒そうと思ったら10分で倒せた。だけど俺はアイツに火をつけたかった。昔の棚橋が欲しかったんだ。前にも言ったけど、アイツの身体はボロボロだけど魂は違う。そして俺はアイツに全力を尽くして欲しかったんだ。そして実際にあと少しでやられるところだった。あのハイフライフローの後、終わったと思った。息が出来なかった。でもそんなアイツとリングで対峙したかったんだ。そして次に考えてることは『G1 CLIMAX』だ。まさしく、チャンピオンズリーグだ。最高の中の最高を決める場所。アメリカのプロレスなんて興味ない。俺はただ楽しむためにアイツらを殴り倒し、金を稼いでるんだ。そんなことどうでもいい。これは『G1 CLIMAX』だ。このトーナメントが全てなんだ。本当の最強を決める場所。俺は確実にキツいブロックに入れられた。でもここで明言しよう。それで良かった、素晴らしいよ。以前は新しいことに挑戦するのが怖かった。疲れるのが怖かった。でも今はそれが良いと思う。なぜなら真の姿が明らかになるから。止めるのか、それとも進み続けるのか? ゲイブ・キッドは最後まで進み続ける。『G1 CLIMAX』決勝まで行く。そして制覇する。そしてこの王座と一緒にIWGP世界ヘビー級王座を掲げるぞ。サイゴーのこの身体を見てくれよ。最高のコンディションだ。(※サッポロビールを手に取るが、戻して)アルコールゼロのビールが必要だ。カンパイ、アリガトウ」

【棚橋の話】「(※村島に肩を借りてやって来ると、そのまま床に寝転がり)すいません、今日はこのままで。俺が彼に出会ったのはもう何年も前のことで、自分の引退という時間軸、早いと思ってたけど、それ以上に周りの若い選手の成長が頼もしくもあり、悔しくもあり、悲しくもあり……。なんだろう、この感情は……。なぜ負けて悔しいのか……。(※身体を起こして立ち上がりながら)まだ俺のプロレスラーとしての炎は消えてないってことだから。最後の最後、最後のその日になるまで、残り1秒になるまで頑張ります」