プロレス・格闘技の情報満載!全日本・ノア公式モバイルサイト

1/29【新日本】ラストマッチで初の棚橋戦堪能 KUSHIDAが新日本マットに別れ「行ってきます!」

『Road to THE NEW BEGINNING』東京・後楽園ホール(2019年1月29日)
○棚橋弘至vsKUSHIDA×

 KUSHIDAが所属ラストマッチで初めて実現した棚橋との一騎打ちを堪能。接戦の末に敗れたが、最後は「この8年間の出来事、新日本のレスラーとの戦い、巡業バスのこと、いろんな風景、そして今日のお客さん、未来永劫忘れません。これを最高のお守りとして旅してきます。今まで本当にありがとうございました。行ってきます!」と晴れやかな表情で新日本マットに別れを告げた。

 海外マット参戦を視野に入れたKUSHIDAは1月末をもって8年間在籍した新日本を退団することになった。記者会見の席で、KUSHIDAはやり残したことを問われて、IWGPヘビー級王者・棚橋との一騎打ちを挙げ、所属最後の試合で初のシングルマッチが実現した。KUSHIDAにとって棚橋は階級こそ違えど、ずっと背中を追いかけてきた特別な存在。また、新日本入団前の2011年3月、棚橋がSMASH所属ラストマッチに駆けつけて激励したという繋がりもある。

 2人は昨日(28日)の後楽園大会で最後のタッグを結成。BULLET CLUB相手に快勝すると、KUSHIDAは「最後、喜怒哀楽全部詰め込んで…」、棚橋は「爽やかに送り出す、そんな気持ちはさらさらないと思うよ。だから、明日は…ぶっ潰します!」と一騎打ちに向けて宣言していた。

 別れを惜しむように、客席はKUSHIDAの応援ボードで埋め尽くされる。まずは熱のこもったグラウンド戦で幕開け。体格差を活かした棚橋が左ヒザ攻めで序盤戦をリードする。棚橋が鉄柱まで使うと、客席からはブーイングが飛び、場内はKUSHIDAコールに包まれた。

 オーバーヘッドキックでやっと反撃に転じたKUSHIDAは、左腕にミドルキックを乱射して腕攻めを開始。師匠であるTAJIRIゆずりのハンドスプリングエルボーやバズソーキック、さらにジャーマンもさく裂した。そして、コーナーを指差し、かつての必殺技・ミッドナイトエクスプレスを予告する。

 一瞬の隙を見逃さない棚橋は背後から足を絡め取り、裏ドラゴンスクリューを連発。エルボー合戦からKUSHIDAがマサヒロタナカを狙っても、こん身のビンタで黙らせる。しかし、KUSHIDAも真っ向から応戦。腕攻めとヒザ攻めを狙って、激しくせめぎ合った。

 KUSHIDAは延髄斬りからホバーボードロックの構え。棚橋の抵抗を受けると、一旦右腕への腕ひしぎ逆十字固めに切り換えた。棚橋が強引にテキサスクローバーホールドを狙うと、再び左腕狙いに戻して、またもホバーボードロックに。棚橋がエスケープしそうになると、バックトゥザフューチャーを狙うが、これを読んだ逸材はツイスト&シャウトをズバリ。スリングブレイドで追撃すると、ハイフライフローアタックを浴びせる。そして、今度は正調ハイフライフローを投下した。

 KUSHIDAはヒザを突き立てて迎撃。そこからバックトゥザフューチャーを敢行する。場内はカウントの大合唱となるが、棚橋はギリギリでキックアウト。両者大の字になると、またもやKUSHIDAコールに包まれた。先に立ち上がったKUSHIDAはホバーボードロックにこだわる。しつこく左腕に絡みついたが、棚橋はクラッチを決して離さず、強引に背後に回り込むと、ダルマ式ジャーマンでぶっこ抜いた。KUSHIDAは肩を上げたものの、棚橋は間髪入れずにテキサスクローバーホールドに捕獲。声援に応えようとロープを目指すKUSHIDAをリング中央に引きずり込み、エグい角度で絞めに絞めてギブアップを奪い取った。

 死闘を繰り広げた2人が抱擁を交わし、場内は感傷的なムードに包まれたが、そこに棚橋とのIWGP戦を控えるジェイ・ホワイトが乱入。パイプイスで棚橋を殴り飛ばすと、右膝にも振り下ろした。「帰れ」コールや怒号が飛ぶ中、ジェイはIWGPのベルトを強奪し、まるで自分のものだと言うように、倒れる棚橋の眼前で抱え上げる。そして、「バイバイ、KUSHIDA」と捨てゼリフを残して去っていた。

 棚橋はまさかの襲撃を受けて自力で歩けない状態に。それでもKUSHIDAは頭を下げて感謝の意を表す。さらに、セコンドの肩を借りて棚橋が去っていくと、その背中にKUSHIDAが「棚橋さん、最後の最後までプロレスラーとして最高にカッコいい姿、勉強させていただきました」とマイクで声をかけ、一礼した。

 場内がKUSHIDAコールに包まれると、最後に観客に対して惜別のメッセージ。「この8年間の出来事、新日本のレスラーとの戦い、巡業バスのこと、いろんな風景、そして今日のお客さん、未来永劫忘れません。これを最高のお守りとして旅してきます。今まで本当にありがとうございました。行ってきます!」と力強い言葉で新日本マットに別れを告げた。

 四方の観客に深々と頭を下げ、リングサイドの観客と抱き合って別れを惜しんだKUSHIDA。バックステージでは「棚橋さん、強かったです。今まで戦ってきたレスラーの中で、一番強かったです。何も通用しなかったです。空っぽです」と悔しそうにラストマッチを振り返った。

 とはいえ、その表情は明るい。海外での戦いに向けて、「全て終わったという感じというよりは、明日からヤベえぞと。明日からまた走り出さないと、これはヤバいことになるぞと。期待感…不安ももちろん数%ありますけど、ワクワクで、すぐに走り出さなきゃと。そういう気持ちで一杯です」と期待感をあらわにすると、「ジュニアヘビー級の可能性を、俺はこれからも勝手に背負って戦っていきます」と改めて約束し、新天地へと旅立っていった。


【試合後のKUSHIDA】
▼KUSHIDA「本来でしたら、棚橋弘至から、IWGPヘビー級チャンピオンから3カウント、ギブアップを奪って、追ってくる大人たちを振り切って、全速力で海外に逃げようと思ってましたので、この場でコメントするつもりはなかったんですけど…。棚橋さん、強かったです。今まで戦ってきたレスラーの中で、一番強かったです。何も通用しなかったです。空っぽです」

――応援ボードを用意するなど観客は暖かく見送ってくれたが?

▼KUSHIDA「最初に入団する時に言いました。お客さんとも勝負していきたいと。そういうレスラーでありたいと最初に言ったので、やっぱり光景見て、この8年間、大変なことも、嬉しいことも、なんか全てチャラになった…いや、凄いプラスになったという本当に贅沢な光景を見させてもらいました。本当にありがとうございました。本当にお客さんも最高。戦うレスラーも最高。リング作るスタッフ、大勢のプロレスを支える会社の人たち、そしてオーナー。これがないと僕らは四角いリングで戦えませんので。なにひとつ不満がないんですよね。なにひとつ辞めたいと思う理由がないのに、なんでこの決断をするんだろうって、自分が一番呆れているんですけど。だけど、この命を授かったからには…。ジュニアヘビー級を作った先人たちがいなければ、僕なんかプロレスラーになれてない。こうやってリング上でKUSHIDAを表現できてないから。新しいことを作るのも大事だけど、道場の技術、僕はそういうのに救われてプロレスラーになれたから。これからも忘れずに、新日本プロレスで培った8年間、これを最強のお守りにして。そしてデビューの時から応援してくれるファンの人、支えてくれる人たち、怖いものなしですね。全て終わったという感じというよりは、明日からヤベえぞと。明日からまた走り出さないと、これはヤバいことになるぞと。期待感…不安ももちろん数%ありますけど、ワクワクで、すぐに走り出さなきゃと。そういう気持ちで一杯です。振り返ると、新日本プロレスに入った時はジュニアヘビー級の選手の数が少なくて、ヤングライオンも少なくて、新弟子も少なくて。だから、新日本プロレスにこうしてチャンスをいただいたんだなと俯かんで見ながらも、自分が何かことをなさなきゃいけない。それはやっぱりジュニアヘビー級の舞台を1つでも2つでもヘビー級に負けないステージに上げることで。ジュニアヘビー級の可能性を、俺はこれからも勝手に背負って戦っていきます」

――後楽園ホールという会場には思い入れがあると思うが、最後に今日はどう感じた?

▼KUSHIDA「やっぱり小さい会場、大きな会場、1試合1試合どれも同じ試合なんですけど、見ている絶対数は東京ドームとか、後楽園ホールは多いわけで。そこでの評価で結構レスラーの評価も上がったり下がったりすると思いますけど、そうじゃないと思うんですよね。巡業1つ1つが大事だし、それを僕は新日本プロレスで学んだ。その1つ1つがあるから、やっぱり後楽園ホールも大事だし。でも、終わりと始まりが後楽園ホールというのはきっと何かあるんでしょうね。それはプロレスの聖地だからだと思います。こうして囲んで、僕なんかのコメントを映していただけるなんて、せん越ながら本当に嬉しいです。これを裏切っちゃいけない。明日から肝に銘じて、プロレスラーとしてしっかり生きていきます。本当に皆さん、ありがとうございました」

プロ格 情報局