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6/26【POWER HALL】長州が完全燃焼でマットに別れ 笑顔で「家族の元に帰ります」

『POWER HALL 2019-New Journey Begins-』東京・後楽園ホール(2019年6月26日)
○真壁刀義&藤波辰爾&武藤敬司vs越中詩郎&石井智宏&長州力×

 長州がラストマッチで完全燃焼。真壁のキングコングニードロップ4連発に沈んだ革命戦士は、英子夫人をリングに呼び寄せて抱擁を交わすと、笑顔で「家族の元に帰ります」とリングに別れを告げた。

 長州は74年に新日本プロレスでデビュー。噛ませ犬発言でブレイクし、藤波との“名勝負数え唄"を経て、プロレス界の中心選手となった。その後、ジャパンプロレスを設立し、全日本マットにも進出。新日本に復帰後は現場監督としてリング内外でプロレス界をけん引した。98年に一度引退したものの、2000年の大仁田戦で復帰。それ以降もWJの立ち上げや新日本電撃復帰などで話題を呼び、近年はフリーとして各団体に出場していた。

 しかし、昨年の7・10後楽園で「あと何試合かしたら引退。靴を脱ごうと思っている」と“完全引退"を示唆。最後の相手に藤波を指名し、とうとう“ラストマッチ"を迎えた。タッグを組むのはWJなどで行動を共にした弟分の越中、愛弟子の石井。対戦相手は永遠のライバル・藤波、新日本マットで激闘を繰り広げた武藤、かつての付き人・真壁のトリオだ。

 実況席に辻よしなりアナと天龍源一郎さんが付くと、リングには田中ケロアナ、タイガー服部レフェリーが登場。田中ケロアナの「時が来た!」の雄叫びから1人ずつ選手が入場する。各選手に大声援が巻き起こると、最後に長州が『POWER HALL』に乗って姿を現した。場内は割れんばかりの「長州」コールに包まれる。長州はいつもと変わらず、黒いショートタイツと白いリングシューズに黒いTシャツ姿でリングインした。選手コールを時には気合いの入った表情で拳を突き上げると、後楽園ホールは「長州」コール一色に。

 長州は越中と石井を下がらせて先発。いきなり藤波との顔合わせが実現する。コーナーに押し込むとストンピングをお見舞い。藤波がストンピングを返すと、蹴り足を掴み、掟破りのドラゴンスクリューを敢行。場内は沸騰した。長州は武藤を指差してから、サソリ固めを狙うも、ニアロープでブレイクとなる。すると、復帰戦となる武藤が登場。張り切る長州はフライングメイヤーから首筋にエルボーを落とし、スリーパーに固めた。

 長州の眼前でヘタなファイトはできないと越中と石井も奮戦。強豪トリオを相手に一歩も引かない。石井は攻め込まれる場面があったものの、強烈な頭突きやジャーマンで押し返し、長州と合体して真壁にハイジャックパイルドライバーを敢行。越中もパワーボムやエプロンからのジャンピングヒップアタックを真壁にぶち込んでお膳立てし、長州にタッチを渡した。

 長州は気迫全開でストンピングをぶち込むと、リキラリアットを一閃。後楽園ホールは沸騰する。そして、すかさずサソリ固めに捕獲。越中たちは分断に動く。だが、真壁が必死に耐え抜くと、藤波がビンタでカットイン。今日2発目のリキラリアットを受け止めた真壁は、3発目をラリアットの相打ちに持ち込み、同時にマットへ崩れ落ちた。

 すると武藤がリングに飛び込んでシャイニングウィザードで援護射撃。藤波と武藤はドラゴンスクリューで越中たちを排除する。息を吹き返した真壁は長州にラリアットをズバリ。必殺のキングコングニードロップを投下した。長州は執念でフォールを返すが、真壁は1発、2発、3発とキングコングニーを連発。それでも長州は肩を上げて場内を沸かしたものの、4発目の直撃を受けると、フォールを返せず、そのまま3カウントを聞いた。

 ラストマッチで敗北を喫した長州だったが、穏やかな表情で藤波や石井らと抱擁を交わす。すでに引退試合を行っている身のため、10カウントゴングは鳴らされず、最後の選手コールが行われ、聖地は「長州」コールに包まれた。

 笑顔でマイクを持った長州は「長い間、45年間、プロレスファンの皆さんに応援されながらここまで来ることができました。私にとってプロレスは何だったのかなと振り返ったら、全てが勝っても負けても私自身はイーブンです。本当にイーブンでした」とレスラー生活を振り返ると、「ただ、今から1つだけお願いがあります。どうしても勝てない人間がいました。それは今日来てくれた家内の英子です。最後に彼女をこのリングに上げたいと思います」と英子夫人をリングに呼び寄せる。そして、満面の笑みで抱擁を交わすと、「今日、私はここまでです。もう終わります。また引退して、家族の元に帰ります」と宣言した。

 さらに、愛弟子である馳浩もリングに呼び寄せて握手。馳は「僕も長州さんに憧れて専修大学に行き、プロレスラーになりました。長州さん、本当に今までありがとうございました」と恩師をねぎらった。

 満足げな長州は「どうも本当にありがとうございました。これからもこのような雰囲気で、これからリングに上がる若い選手たちを皆さんの声援でリングに押し上げてやってください」とメッセージ。「この会場の雰囲気を作るのは選手ではなくて、皆さんの熱い声援なので。ぜひ今後ともよろしくお願いします。本当に長い間、ありあがとうございました」と観客に感謝の意を表すと、『POWER HALL』の旋律に乗って晴れやかな表情でリングに別れを告げた。

 バックステージでは「この6月26日という日にちが決まってから、常に毎日ですね。毎日あたまのどこかで、1回は猪木会長の顔と名前っていうのが頭の中に浮かびますよね」と師匠・アントニオ猪木への思いを口にした長州。「プロレスを24時間考えてやっているというのを感じてきましたよね。まあ、到底及ばないですけど、プロレスの大事なものというのを自分なりに考えながら、あのリングの中に打ち出してきたんじゃないかなとは思っているんですけど。どうなんですかね? やっぱり答えはないですから」と大きな背中をずっと追いかけてきた45年間を振り返ると、「僕なんかも現場をやりましたけど、なかなかそこまではできなかったですね。やっぱり凄い方ですよ」と改めて師匠を賞賛した。

 今後については「何も考えてないです。今は正直言って、自分ができることをなにかやっていかないといけない。まあ、ゆっくり考えますよ」とコメント。長年、リング上で見せてきた険しい表情が嘘のように、充実感を漂わせた笑顔で控え室へと消えていった。


【試合後の長州】
――試合を終えた今の心境は?

▼長州「今の心境? 疲れましたね。最後は空回りしてましたよね。そこを越中、智宏がが助けてくれたけど。そんなところです」

――リング上に奥様を呼び寄せたが?

▼長州「まあ、これが最後だと思えば、やっぱりいろいろと迷惑かけたし、今も心配もしてくれるし。まあ、こうして元気に何事もなく降りてくることができたし。まあ、Uターンですね」

――これからの目標は?

▼長州「何も考えてないです。今は正直言って、自分ができることをなにかやっていかないといけない。まあ、ゆっくり考えますよ」

――最後は真壁選手に敗れたが?

▼長州「そうですね。できれば仕返ししてやろうかなと思ったんですけど、やっぱり違います。みんな成長してますよ」

――最後に3カウントを聞いた気分は?

▼長州「いやあ、別に。ああ、これで終わりだなっていう感じで。そんな滅入ったような感じにはならないですよ。まあね、1つだけ。今日は源ちゃんが来てくれたし、反対に源ちゃんの前で、『ああ、やっぱり長州もここまでだな』って思われたくなくて、ちょっと踏ん張ってはみたんだけど、一番気持ちの中に残っているのは会長である猪木会長のことがやっぱり。この6月26日という日にちが決まってから、常に毎日ですね。毎日あたまのどこかで、1回は猪木会長の顔と名前っていうのが頭の中に浮かびますよね。やっぱり45年間、ここまで成長できたのは自分自身、猪木会長の…まあ、とてつもない違いがあるんですけど、やっぱりリングに上がる中で、あの方をずっと見てきて、プロレスっていうものがわかってきて。『ああ、大変だな、これは』っていうのは常に感じてここまでやってきましたね。でも、それでもとてもじゃないが、やっぱりリングの中のアントニオ猪木に近づくってことはとてつもなく大変なことなんだなっていう。これは本当に、もう終わった時点の中で、やっぱりこの業界でこうやってここまでファンの皆さんに支えられながらやってこれたのは、ひとえにあの人を見て、自分なりの感じ方で『自分というものは、プロレスはこういうものだよ』って。いつまでやるかはわからないけど、やっぱりあの人は教えることはしないですけど、リングサイドから我々には…ここにいる古い記者の人たちはたぶん知っている通り、やっぱり猪木会長の場合は、あの方が会場の雰囲気を作るというか。ファンの人たちが後押しするわけだから、やっぱり凄いなっていうのは。その時代、マスコミは馬場さんと比べたでしょうけど。馬場さんも素晴らしい方でした、温厚で。でも、自分が選んだのはプロレスの世界ですから、どっちかというと、やっぱり自分の性分としては、猪木会長のリングの中でも、リングを降りてからも、猪木さんのスタイル。プロレスを24時間考えてやっているというのを感じてきましたよね。まあ、到底及ばないですけど、プロレスの大事なものというのを自分なりに考えながら、あのリングの中に打ち出してきたんじゃないかなとは思っているんですけど。どうなんですかね? やっぱり答えはないですから。まあでも、本当にその偉大な猪木さんは会場の中で1人で空気を作って、ファンを引き寄せてましたよね。僕なんかも現場をやりましたけど、なかなかそこまではできなかったですね。やっぱり凄い方ですよ」

――藤波選手とも最後の対決になったが?

▼長州「たぶん藤波さんも…。今日はちょこっと触らせていただいたんですけど、藤波さんもどっちかというと、ずっと会長についてきた人ですから。表現の仕方は別にして、彼もそうなんじゃないかなと思いますね。これは僕もちょっとわからないところですけど。まあでも、最後に悩みましたよ。猪木さんを呼ぶっていうね。猪木さんを呼んで雰囲気作りしてもらおうかなという部分もありますけど、まあここは最後の自分の集大成として、どういう状況になるのかなっていう。でも、熱い声援でリングに。ファンの声援で押し出してもらって、感謝していますね。以上です。僕は。どうもありがとうございました」

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