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9/21【DRAGON GATE】ウルティモ加勢で吉野が間一髪金網脱出 即引退を回避、現役延長に含み

『DANGEROUS GATE 2020』東京・大田区総合体育館(2020年9月21日)
金網6WAYマッチ EitavsYAMATOvsB×Bハルクvs吉野正人vsKAIvsビッグR清水

 師匠ウルティモ・ドラゴンの加勢を受けて、吉野が最後の最後で金網を脱出し、即引退を回避。試合後、土井たちに説得されて、現役生活延長に含みを持たせた。

 参加する6人がそれぞれ過酷な“リスク"を背負って行われた今回の金網マッチ。金網上に設置された旗を取った選手が勝ち抜けとなるが、時間差入場のため、入場順が早いほうが圧倒的有利になる。これまで入場順を巡る争いが続いてきたが、その最中でR・E・Dには内紛も発生した。とはいえ、R・E・Dから3人、DRAGON GATE世代から2人出場する中、闘龍門世代の吉野はたったひとり。しかも負け残った場合、「試合後に髪切りが執行されたうえで土井成樹と引退試合を行い、そのまま引退となる」というきついリスクを背負っており、厳しい戦いが予想されていた。

 各軍のセコンドがリングサイドに陣取ると、時には反対側から金網にもよじ登り、仲間以外が旗を取るのを棒やゴムパッチン、クラッカー、スポーツ応援用のラッパなどで妨害し、序盤から大混乱に。清水、KAIからスタートし、吉野、ハルク、YAMATOと金網に入る選手が増える中、いきなり衝撃的な事件が起きる。「最初にエスケープした場合にはDRAGON GATE世代より脱退しR・E・Dへ加入」というリスクを背負ったKAIが、仲間のYAMATOを裏切った末に、自ら最初に旗を取ったのだ。この結果、KAIのR・E・D入りが確定。KAIは嫌がることなくR・E・DのTシャツを着込むと、これまで仲間だったDRAGON GATE世代を暴行する。

 最終入場者のEitaは有刺鉄線ボードを持って入場。R・E・Dのメンバーが3人揃う形になると、吉野を一方的に蹂りんする。その後、KAIのアシストを得たハルクが2番目に勝ち抜けると、YAMATOも旗を奪取。リング上は吉野、Eita、清水の3人に。Eitaと清水は裏切る素振りを見せながらも共闘を継続して、なおも吉野を痛めつける。そして、Eitaは追いすがる吉野にパウダーを浴びせて脱出を果たし、リング上は吉野と清水の一騎打ちに。

 即引退を是が非でも避けたい吉野は意地の大攻勢。トルベジーノ2連発からソル・ナシエンテで絞めに絞める。清水は激痛に苦しみ、遂には「ギブアップ」を口にするが、この試合では認められない。吉野は清水の腕を破壊しようとなおも絞め続けたが、ここでレフェリーから鍵を強奪したR・E・Dのメンバーがリングを占拠。パイプイスを散乱させると、Eitaはそこめがけてツームストンパイルドライバーを繰り出し、吉野をKO寸前に追い詰めた。

 もはや吉野の現役生活は風前の灯に。しかし、ここでウルティモ・ドラゴンが颯爽とリングイン。封印状態だったアサイDDTで清水の動きを止め、弟子を援護する。師匠のゲキに応えようと、死力を振り絞って金網によじ登った吉野は、とうとう残る最後の1つをゲットし、間一髪で即引退を免れた。

 完璧なお膳立てをしたのにもかかわらず、惨敗を喫した清水をR・E・Dの面々は集団暴行。「R・E・D追放」「髪型を角刈りに」「リングネームを『リョーツ清水』に改名」のリスクが確定した清水の髪をハサミで切り刻むと、Eitaは使用しないままだった有刺鉄線ボードをリングに運び込み、清水制裁を狙った。が、清水が逆にEitaをボードに投げつけると、リスクを受け入れる姿勢を示しつつ、「俺はお前らの奴隷じゃねえんだよ!」とEitaに三下り半。有刺鉄線ボードに直撃したEitaは痛みに苦しみ、なにも言い返せず、リングをあとにした。

 R・E・Dのメンバーと入れ代わるように、リングに入ったのは闘龍門世代。吉野は「東京…大田区…吉野正人、生き残ったぞ!」と雄叫びを上げる。感極まった様子の吉野は「生き残ったからには、俺ももう少しこのリングでプロレスを続けていいですか?」と観客に問いかけると、大田区総合体育館は大きな拍手に包まれた。

 うなだれたままの清水を「生きてりゃいいことあるから」とリングから送り出した斎藤は、吉野の引退について改めて言及した。吉野は昨年末に2020年での引退を発表したものの、新型コロナウイルスの影響のため、3月〜7月の間は試合をすることができなかった。斎藤は「もしかしたらその4ヵ月の間の試合で、最後の吉野の試合を見に行こうと思ったお客さんがいたかもしれない。でも、その人たちの思いが叶わなかったんだ」と強調すると、「あの4ヵ月を俺たちは素直に受け入れて、年内中に吉野はこのリングを去っていいんですかって話ですよ」と吉野に思いをぶつける。土井も「一昨日の東大阪の地元で本人も言ってました。今、コンディションはメチャクチャいいと」と明かし、改めて吉野に心境を聞くことになった。

 吉野は「4ヵ月、試合をすることができなくて、休ませてもらいました。そのおかげでね、コンディション良くなりました」と告白。「首は確かによくなりました。でも、俺は2020年に引退すると皆さんの前で宣言しました。そう簡単に変えられることじゃない。皆さんが今、温かい拍手を送ってくれたかもしれない。でも、俺も覚悟を決めて、これからの人生のことも考えて発表しました。それを考えたら、今ここで撤回しますとは言えない」と揺れる気持ちを垣間見せ、「少しせめて考える時間だけでもくださいよ」と明言を避けつつ、現役生活延長に含みを持たせた。

 「これからどんな展開になっても、最後の最後の日まで、吉野正人はこのリングで戦い続けますので、皆さん見守ってください」と波乱の大田区大会を締めくくった吉野。バックステージでは「まだ3ヵ月あるんでね。少し時間をもらって、本当に自分の首の状態がよくて、できるんであれば、それに応えたいなという気持ちはある。それだけはわかってもらえればと思います」と慎重な姿勢を保ちつつ、現役延長に向けて前向きだった。

【吉野の話】「とりあえずね、この金網マッチで無事に生還して、今日の引退を回避することができました。本当にこの金網マッチが決まって、リスクも決まってから、たぶん誰にもわからない、自分しかわからないプレッシャーというのがあったんですね。それがこの日が近づいてくるたびに、あと3日や、あと2日や、あと1日やと、本当に覚悟してました。今日出てくる時も、もしかしたらこうやってコスチュームを持って試合会場に行くのも最後になるかもしれんと。考えたくはなかったですけど、心のどこかでそういう思いもあったりとか。でも、闘龍門世代のメンバーと、会場に集まってくれた皆さんと、テレビの前で見てくれている人もいますんで。皆さんの応援が力になったというか。本当に最後、R・E・Dが入ってきて。自分の中ではソル・ナシエンテで勝負をかけたんですよ。もちろんあのルールはギブアップがないですけど、あそこで清水の腕を完全に極めてしまえば、たぶん清水はこのあとどんな展開になっても金網に登ることはできないだろうという。そういう思いもあってソル・ナシエンテを使ったんですけど、あそこにR・E・Dが入ってきて潰されて。最後、イスの上に落とされた時に、正直、首と頭が刺さって、ボーッとしたんですけど、その中でまだどこかで闘龍門世代の声とかも聞こえてたし、お客さんのざわつきというのも感じたんで。パッと目を開けた時には、ウルティモ・ドラゴン校長がリングに立ってて、アサイDDTをやるのが見えたんでね。その時点で、ダメージとリング内にひとり校長がいるというので、なにが起きたかもわからない状況やったんですけど、校長もあの技というのは大切にしていると思いますし、たぶんDRAGON GATEに帰ってきて、DRAGON GATE本体で使ったというのは初めてだと思うんですね。それを試合じゃなく、自分を助けるために。校長があの技を出してまで、自分を助けようという、そういう思いというのは、今こうやって金網をエスケープしてみても凄く伝わってくるので、本当に感謝ですね。最後、土井ちゃんと斎了さんから引退を延ばせないかという提案がありましたけど、リング上でも言いましたけど、この数ヵ月、休んだというか、休まざるを得なかったことで、本当に1月2月に戦っていた時に比べたら、かなりよくなりました、正直言って。あの時期というのは、一発食らってしまったら動けなくて、動きが完全に止まってしまった状態だったのが、徐々にトレーニングもできるようになって、だいぶ張りも戻ってきましたし。今日も最後、ああやって6mの金網に登ることもできたんで、状態はいいですけど、もちろん自分も無理は。残り3ヵ月、12月まで無理はできないですけど、彼らの思いと、今日会場に来てくれた人の拍手というのはしっかり受け止めましたんで。今はちょっとそこまで考えられないですけど。2020年と決めて、あと3ヵ月で第二の人生を踏み出そうとするところまで来てたんで。じゃあ、今ここで急に一気に変えますということはすぐには言えないし。まだ3ヵ月あるんでね。少し時間をもらって、本当に自分の首の状態がよくて、できるんであれば、それに応えたいなという気持ちはある。それだけはわかってもらえればと思います」

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