【センダイガールズ】里村明衣子が引退 アジャ撃破&最後のタッグ結成で30年のレスラー人生に終止符 「これからもプロレス界に人生を捧げていきます」 2025/4/29

 『里村明衣子 THE FINAL』が29日、東京・後楽園ホールで行われ、里村明衣子が引退試合で永遠のライバル、アジャコングに勝利して有終の美。急きょアジャとの最後のタッグ結成も果たし、30年間のプロレスラー生活に終止符を打った女子プロレス界の横綱は第二の人生へ向けて「これからもプロレス界に人生を捧げていきます」と誓った。

 昨年7月の引退発表から9ヵ月、里村がリングを去る日を迎えた。里村は1995年4月15日、GAEA JAPAN旗揚げ戦・後楽園大会で15歳の若さでデビュー。新人離れした戦いぶりが注目を集めた。GAEA解散後、2006年にセンダイガールズプロレスリングを旗揚げ。圧倒的な強さと存在感を放ち、いつしか“女子プロレス界の横綱"と称されるようになった。2021年からWWEに出場。海外でも評価を高めた。そしてデビュー30周年を経たこの日、引退の時を迎えた。

 里村引退試合はタッグマッチ。愛海をパートナーに抜擢し、橋本千紘&アジャと激突した。愛弟子・橋本とは3・19代々木大会でセンダイガールズワールド王座をかけて対決し、敗れている里村にとって最後の雪辱の機会。アジャとはこれまで幾多の激闘を展開。永遠のライバルを最後の相手の一人に選んだ。

 愛海、アジャ、橋本の順で入場すると、テーマ曲「ROCK YOUR LIFE AWAY」が流れる中、里村が最後のリングへ。小橋建太から激励の花束を贈呈され、リングコールを受けると、たくさんの赤い紙テープが飛んだ。

 試合を裁くのは和田京平レフェリー。先発で飛び出した里村が橋本と対峙すると、聖地が「里村!」コールに包まれた。相手の土俵であるレスリング勝負を展開した里村は倒立式ニードロップを投下して先制。STFで絞め上げる。スピアーで反撃され、アジャにラリアット、パイルドライバーの猛攻で攻め込まれると、橋本には俵返しでぶん投げられた。

 それでも愛海が里村の期待に応えるように橋本を攻め込んで立て直すと、里村はエルボー合戦で橋本と火花。サトムラスペシャルをさく裂させ、ミドルキック、顔面蹴り、左右のナックルパンチと打撃の雨を降らせた。

 その後、3・19代々木の王座戦を再現するような橋本の高角度パワーボムで追い込まれ、アジャに急角度バックドロップを3連発されてピンチを迎えた。それでもダイビングエルボードロップをキャッチして腕ひしぎ逆十字固めで捕らえ、オーバーヘッドキック、デスバレーボムの猛攻に出る。アジャの裏拳を食らっても再びデスバレーボムで突き刺してニアフォールに追い込んだ。

 勝負をかけたスコーピオライジングをアジャに阻まれると、一斗缶攻撃、一斗缶への垂直落下式ブレーンバスターで一転してピンチに。オーバーヘッドキック、ハイキックでやり返しても裏拳を食らってしまう。それでもオブライトを狙った橋本にアジャの裏拳を誤爆させると、愛海が橋本を分断する好フォロー。すかさず里村がスコーピオライジングをアジャの脳天に突き刺して3カウントを奪った。

 里村がラストマッチで好敵手・アジャにピンフォール勝ち。引退試合でも「絶好調の里村明衣子」をこれでもかと見せつけて有終の美を飾った。が、里村最後のリングはこれで終わらなかった。「お前との戦いは来世に持ち越しだよ」と言い放ったアジャが「お前の引退試合で悪いんだけど、俺の最後のワガママ聞いてくれないかな? 5分でいい。お前と俺でコーナーに並び立て。里村明衣子とアジャコングが組んで5分でいい。試合させてくれよ。相手は誰でもいい」とアピールした。

 するとYUNA、暁千華、岩田美香、彩羽匠、橋本が次々に名乗り。アジャが「まとめて全員かかってこい!」と宣言し、里村&アジャvs橋本&岩田&彩羽&YUNA&暁の2対5ハンディキャップマッチが急きょ実現した。里村がYUNAのドロップキック連打、暁のボディスラムからの全女式押さえ込みを真っ向から受け止めると、アジャは両腕ラリアットで橋本と彩羽をまとめてなぎ倒す大暴れ。里村は彩羽のニールキック、岩田の串刺しジャンピングニー3連発、ミドルキック連打で攻め込まれると、5人からトレイン攻撃を浴びた。

 どさくさに紛れて里村のコスプレをしたシン・広田さくらが乱入したが、里村がデスバレーボム、アジャがダイビングエルボードロップの豪快リレーで返り討ち。橋本の両腕ラリアットでねじ伏せられた里村がパワーボムの餌食となりかけたが、アジャが一斗缶攻撃で救出。アジャが押さえつけた橋本に里村がスコーピオライジングを叩き込んだところでタイムアップを告げるゴングが鳴らされた。

 「里村!」コールの大合唱の中、引退セレモニーの段となったところで、愛海が里村に殴りかかった。「里村さん、自分はもっと戦いたかったです。だけど、皆さん、ここからが新しい仙女の始まりですよね? 私が皆さんと里村さんに新しい仙女の景色をお見せします!」と誓った愛海は「30年間、お疲れ様でした」と深々と頭を下げ、里村も握手で応じた。

 最後の相手を務めた橋本は「里村さん、今日は絶対涙流さないって決めました。だってこれからのセンダイガールズ、もっともっと見せていかなきゃいけないのは私ですよね? 今日の試合もたくさん課題をくれてありがとうございます。まだまだ私には足りない。そういうふうにいつも何か与えてくれるのが里村さんでした。最後までありがとうございます」と感謝。「里村さんが叶えられなかった夢、日本武道館の夢を…必ずこれからのセンダイガールズ、橋本千紘が先頭に立って叶えます。約束します」と涙ながらに誓った。

 そしてアジャは「里村明衣子、最後の最後に俺のワガママ聞いて並び立ってくれてありがとうございました。ただ、やっぱりお前は横にいたら気が合わない。やっぱり向かい合ってなきゃ無理だ。だからさっき言った通り、続きは来世だ」と改めて通告。「お前は今日、里村明衣子というプロレスラー、選手としてのリングはいったん降りるかもしれない。でもセンダイガールズを率いて、これからいろんなもんをどんどん世に送り出していくんだろ? だったら俺はお前との勝負は終わってないと思ってる。お前が送り込んでくるヤツら全員、これからもどんなボロボロになろうが俺はこのリングでぶっ飛ばし続けるよ」と形を変えてのライバル関係継続を宣言し、「だから俺は誰に何を言われようが、これからもしぶとくこのリングで生き続けて、お前が送り込んでくるお前の魂を持ったヤツら、全部潰していくからな。だから面白いヤツどんどんこのリングに送り込め。仙女が世界でトップになるぐらいまで俺は付き合うよ」と投げかけ、握手と抱擁を交わした。

 そして里村が一人リングに残った。カイリ・セイン、イヨ・スカイ、アスカ、棚橋弘至、中邑真輔、デビル雅美からのメッセージがVTRで上映され、里村は両親から花束を贈呈されてねぎらわれた。さらにGAEA JAPANのOG勢、ブル中野、北斗晶、ライオネス飛鳥からも花束が贈呈。師匠・長与千種からは“BLOODLINE OF RED"の文字があしらわれた二人のイラストがプレゼントされ、飛鳥も加わってのクラッシュギャルズとのスリーショット写真に納まった。そして最後にセンダイガールズ旗揚げ時の恩人である新崎人生から花束が贈呈された。

 最後にマイクを手にした里村は「今日は私の最後の引退試合にご来場いただきまして、本当にありがとうございました。今日は私がデビュー時からお世話になった大先輩と、育てて下さった先輩方、同期、そして後輩。皆さんにこうして出場していただいて、そして皆さんにこうやって盛大に応援していただいて、本当に幸せだったんだなと思います」と感謝のメッセージで切り出した。

 「私がデビューして30年間、まったく思いが変わらないのはプロレスって素晴らしいって。プロレスの世界って素晴らしいなってずーっと思ってきました。自分がデビューしたころは先輩方の輝いた姿を見て、自分もスターになりたい、自分がけん引してこの業界を引っ張っていくんだと決めて頑張ってきました。10年目にして団体は解散しましたが、またセンダイガールズという道を作ってくださった新崎人生さんに導かれて、仙女をこうして引っ張っていく立場になり、そこから20年、うまくいかないときもありましたが、それでもプロレスって素晴らしいなって想いながら、もっともっといい世界にしてやる、みんなが誇れる世界にしてやるって思ってずっとやってきました」。

 そうプロレスへの思いを語った里村は「自分自身、夢以上のものをいただきました。本当に人に恵まれました。でも叶わなかったこともあります。レスラーとして叶わなかったことは次のステージに行ったときに必ず実現してみせます。私はこれからもプロレス界に人生を捧げていきます」と宣言。「今日からプロレスラーではなくなりますが、もっともっと皆さんと夢を見ていきたいです。センダイガールズ、これから引っ張っていくのは実は後輩じゃなくて、自分自身がもっと頑張らなきゃいけないんだなって思ってるので、明日からまたプロレスに人生をかける里村でいますので、これからもよろしくお願いします。本当に30年間、皆様、応援ありがとうございました」と誓いと感謝で締めた。

 さらなる「里村!」コールの中、里村は引退テンカウントゴングを万感の表情で聞いた。そして最後のリングコールを受け、大量の紙テープがリングに投げ込まれた中、笑顔で両手を突き上げると、四方に向かって深々と一礼してから最後のリングを降りた。

 プロレスラー里村明衣子に終止符が打たれたが、これからは社長の立場に専念し、センダイガールズのさらなる発展に努める。里村の新たな挑戦が引退とともに始まる。