ファン必見! 注目の試合を採点!

プロレス通信簿

オカダのファンに対する本音は?そして、レジェンドに対する本心は?プロレス通信簿・天龍vsオカダ!

天龍プロジェクト・11月15日・両国国技館

天龍源一郎引退試合
天龍源一郎vsオカダ・カズチカ

「今のプロレスは、まだまだ地位が低すぎる」(オカダ)

今年の6月、ある取材で、オカダにこんな質問をぶつけたことがあった。

今年の6月、ある取材で、オカダにこんな質問をぶつけたことがあった。「ファンからの言葉で、印象に残ってるものってありますか?」すると、オカダは、こう答えた。「応援してくれること自体が嬉しいから、そういうの、個別にはないんですよね。『頑張って下さい』と言われても、(いや、頑張るし)。『勝って下さい』と言われても、(いや、勝つし)みたいな。……すいません、何か俺、ヒドい男になってますね(苦笑)」ただ、その後、こうも繰り返した。「プロレスの地位を上げて行きたいんですよ」。それは、オカダなりの意識の高さだったろう。

「最近はマットの掃除ばかりしてますが、もう少し頑張ります」(天龍・35周年時)

そんなオカダは、15日、天龍源一郎と、その引退試合を戦った。天龍と言えば、ジャイアント馬場、アントニオ猪木からピンフォールを奪った、唯一の日本人レスラー。東京スポーツ制定「プロレス大賞」のベストバウトを歴代最多タイの8度獲得。とはいえ、うち勝ったのは3試合のみ。90年代に5試合受賞した中では、勝ち試合は1試合のみ。いわゆる、「負けて光るレスラー」の代表格でもあったのだ。だが、00年代以降、その内実は、徐々に変容して行った。

11年11月10日、後楽園ホールにて、「天龍源一郎プロレス35周年記念興行」が行われた。天龍の記念ということと、35周年をかけて、席料金の設定は「3万5千円」。(5千円の席もあったが、席数としては些少であった。)簡単に出せる金額ではない。だが、だからこそ、熱烈な天龍ファンが集まった。注目のメインは、「天龍、鈴木みのる、諏訪魔vs佐々木健介、小島聡、太陽ケア」。全員が元三冠ヘビー級王者だった。意地の張り合い、火の出るような攻防。そして、このメモリアル試合で負けたのは、誰あろう、天龍自身だった。(※佐々木健介にフォール負け。)マイクをとって、こんな風に言った。「(歴代の)三冠王者は、やっぱり強かったです」。

そこから4年経ち、迎えた引退試合、オカダのレインメーカーに天龍は沈んだ。オカダは試合後、言った。「すごく年下の後輩の俺が言ってやる。天龍さん、あっぱれだよ」。

「役に立つ年寄りでありたいね」(天龍・11年)

35周年興行の約1ヶ月後、天龍にインタビューする機会があった。時間が余り、同大会を観に行ったことを告げ、「やっぱり勝って欲しかったですけどね」と筆者が言うと、天龍は穏やかに、こんな風に答えた。「逆三角形の社会では、リングに未来はないよ」

引退試合の決着直後、KOされた天龍の回りを、セコンドが心配そうに取り囲む。すると、オカダが激昂した体で、それを蹴散らし、ある行動を起こした。

それは、天龍への、大きく頭を下げての一礼だった。

プロレスライター 鳥浜 英佐

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