【新日本】棚橋がプロデュース興行で丸藤と必殺技競演、一騎打ちに意欲 ドラゲー7・13神戸ワールド参戦へ 2025/6/29
『棚橋弘至プロデュース興行 TANAHASHI JAM〜至(いたる)』愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)(2025年6月29日) ○棚橋弘至&丸藤正道vs清宮海斗&大岩陵平× 来年1月4日に引退を控える棚橋が自身のプロデュース興行『TANAHASHI JAM〜至(いたる)』のメインで丸藤と組み、清宮&大岩組と対戦。必殺技競演で勝利を掴んだ棚橋は丸藤との一騎打ち実現に意欲を見せると、最後のプロレス開催となった愛知県体育館で「愛してま〜す」と雄叫びを上げた。 棚橋とNOAHの丸藤は同世代のライバルにあたり、これまでIWGPヘビー級王座戦やU-30王座戦、G1公式戦などの大舞台でも対戦。昨年5月の『ALL TOGETHER』はDDT・高木三四郎を加えた重役トリオも実現した。対するNOAH・清宮と新日本・大岩の新世代タッグも大岩のNOAH武者修行時に共闘していた縁の深いチーム。未来の再会を誓っていた2人が棚橋興行で久々の合体を果たした。 移転して新たな体育館がオープンするため、現在の愛知県体育館は今月で一般利用が終了に。今回が約60年にわたって数々の名勝負が生まれてきた同所での最後のプロレス興行となった。 第1試合に続き、今日2試合目となる棚橋は先発を買って出ると、清宮と対峙。場内は割れんばかりの「棚橋」コールに包まれると、お互いの実力を確認するかのように、基本的な動きで先制争いを繰り広げる。 先に連係を披露したのは清宮&大岩。約1年ぶりのタッグ結成とは思えない完璧なダブルアームドラッグを棚橋に繰り出すと、スピーディなタッチワークで左腕攻めを展開する。反撃のチャンスを掴めず、防戦一方となった棚橋だったが、反転式ダイビングボディアタックで流れを変えると、丸藤が躍動。大岩をトラースキックコンビネーションでメッタ打ちにすると、逆水平合戦や追尾式ロープワーク合戦で競り合った。 体力を回復させた棚橋も奮戦。フライングフォアアームやダイブ式サマーソルトドロップを清宮に叩き込む。エルボースマッシュのラリーで火花を散らすと、棚橋はビンタを連発。倒れない清宮は笑みを浮かべて狂乱ぶりを発揮し、お株を奪うスリングブレイドからスカイウォークエルボーへ。棚橋はこれを自爆させたものの、清宮もジャンピングニーでカチ上げて両者大の字に。 好機にタッチをもらった大岩は一転して猛攻へ。清宮とのダブルドロップキック、ダブルインパクト式ダイビングボディアタックで棚橋を追い詰める。すかさず大岩はアーククラッチ(キャメルクラッチ式アームロック)でギブアップを迫った。清宮も丸藤を足4の字固めで足止めする。丸藤が足4の字を反転させてなんとかカットに成功。ならばと大岩はジャーマン2連発で棚橋に追撃し、清宮とのジャーマン&シャイニングウィザードもさく裂した。大岩はドクターボムからTHE GRIPへ。 棚橋は必死の抵抗を見せると、丸藤がフックキック、虎王で援護射撃。すかさず棚橋はスリングブレイドからハイフライフローアタックを放つ。清宮が飛び込んでも棚橋のビンタ、丸藤のトラースキックで足止め。最後は棚橋が大岩にハイフライフローを、丸藤が清宮に不知火を同時敢行して、熱戦に終止符を打った。 必殺技の競演で棚橋&丸藤組が快勝。棚橋はマイクを持つと、「丸藤さん、今日は新日本に参戦していただいて本当にありがとうございました」と丸藤と握手を交わす。「U-30の頃からもう10年以上…。丸藤さん、僕は同じ時代を作ってきた仲間として、お先に引退します。ただ、シングルやってないから。それはちょっとあとで相談させていただいて」とシングルマッチ実現にも意欲を見せた。 そして、「棚橋引退まで残り200日を切ってしまいました。1日1日を大事に全力で、そして来年1月4日東京ドームまで全力で走りきるので、皆様、見届けてください! これから7月、そしてG1 CLIMAXと続いていきますので、皆さん新日本プロレスにご注目ください」と呼びかけると、最後は丸藤とともに「ということで、じゃあ、最後に名古屋の皆さん、愛してま〜す!」と拳を突き上げて、自身のプロデュース興行を締めくくった。 最後のプロレス開催となった愛知県体育館での大会は最高の形でフィナレーに。大「棚橋」コールの中、棚橋はIWGPヘビー級王者時代と同じようにリングサイドの観客たちとハイタッチを交わす。ひとりで入場ゲートの前に立ち、歓声に応えて大会終了となった。 バックステージで棚橋は「僕は毎日の試合を、日々の練習を仕事を全力でやる。そういった部分で気持ちは振り切っているんだけど、ファンの皆様、長年応援してくれた皆さんというのは……寂しいのかなって思いますけど。僕はリング上では常に元気で、疲れずに、見に来てくれたファンを少しでも楽しんでもらって。プロレスって本当にそういうものだと信じてやってきたから」と語っていくうちに感極まって涙。「まだ早いよ。まだ6月だから」と必死に拭った。 浮上した丸藤との一騎打ちについては「今、棚橋シングル戦線は行列ができていますんで。ちょっと考えます」と慎重にコメント。「ひとりのレスラーが25年という月日をかけていろんな選手と戦って、いろんな団体に上がって。敵対していたこともあるけど、怒りも憎しみもあったけれど、そういったものを超えて、今日という大会ができたことが、僕がプロレスラーとしてやってきたその証明だと思います」と大会を振り返って再び涙を見せた棚橋だったが、「感情がすごい不安定。ダメだ。しっかりします。社長なんで、エースなんで。まあ、見ててくださいよ。必ずいい流れを作ってみせます」と力強く宣言した。 そんな棚橋の前に現れたのがDRAGONGATEのドラゴン・キッドだ。キッドは棚橋と同じ岐阜県大垣市出身で、高校の野球部の後輩にあたる吉岡勇紀が苦悩していることを伝え、「棚橋さんに7月13日、DRAGONGATE最大のビッグマッチ、神戸ワールド記念ホール大会で僕とタッグを組んでもらって、吉岡勇紀と試合をしてもらいたい」と依頼。棚橋は「やります。かわいい後輩ですし、キッドさんにはお世話になっていますんで、僕でよければ」と快諾した。 丸藤との一騎打ち浮上に続き、今度はDRAGONGATE7・13神戸ワールド大会への参戦が電撃決定。G1 CLIMAX出場も決まっており、引退まで200日を切った棚橋の戦いは落ち着くどころか激しさを増すばかり。それでも逸材は名古屋のファンに約束した通り、最後の瞬間まで全力疾走で駆け抜ける。 【試合後の棚橋】 ▼棚橋「お疲れ様でした」 ――お疲れ様でした。疲れて…… ▼棚橋「疲れてないです」 ――退場するまで満員のお客さんといろんな言葉を交わして、いろんな感情を話されたと思う。今の気持ちは? ▼棚橋「僕は毎日の試合を、日々の練習を、仕事を全力でやる。そういった部分で気持ちは振り切っているんだけども、ファンの皆様、長年応援してくれた皆さんというものはやはり……(※涙ぐみながら)さみしいのかなと思いますけど、僕はリング上では常に元気で疲れずに観に来ていただいたファンを少しでも楽しんでもらって、プロレスって本当にそういうものだと信じてやってきたから。まだ早いよ、まだ6月だから。(※涙をぬぐって)すいません……僕のせいです。大丈夫です、もう大丈夫です」 ――メインイベントでは丸藤選手と並び立っての闘いとなった。あらためて、どうだった? ▼棚橋「IWGP U-30王座を闘った頃、NOAHの天才、箱舟の天才……太陽の天才児もいたんですよって。でもどうしても、丸藤選手の素晴らしい動き、運動能力、そういったものに比べて自分はぜんぜん届いていないなっていう想いがあったんで。団体を越えた選手として意識していましたね。そして今日組めるっていうのが、長くプロレスをずっと続けてきたご褒美かなと思います」 ――1対1でというお話もあったが? ▼棚橋「棚橋シングル戦線は行列ができていますので、まあ……ちょっと考えます」 ――そして対戦相手には大岩選手、清宮選手というこれからのプロレス界を支えていく選手たちとの対戦だった ▼棚橋「清宮選手もちょっと見ないうちにすごい変わっているし、大岩は本当にあの身体に無限のエネルギーを溜め込んだ、新日本の中でほかに似てる選手がいないというか。強いて挙げるなら棚橋の若い頃のような。(※筋肉を強調する仕草で)僕もこんな……いや、誇張しすぎた。とにかく団体は違えど、こうして闘った。そして厚みを感じた。期待していますよ」 ――今日の第1試合では藤波辰爾選手との闘いもあった ▼棚橋「プロレスラーになって藤波さんのような大きい選手をなんとか倒せるようにと、僕は絶対にヘビー級でやっていくんだっていうキッカケをくらた選手なんで。この先、今日が最後かもしれないし。藤波さんの張り手、効きました」 ――そのあと藤波選手には解説席に入っていただいて、「引退にドラゴンストップかけないといけない」なんておっしゃっていたが? ▼棚橋「気持ちは嬉しいです。でも僕はもう覚悟を決めてますんで」 ――今日の大会は棚橋選手のいプロデュースということで、魅力のたくさん詰まった試合がずっと続いていた。大会全体の印象は? ▼棚橋「1人のレスラーが25年という月日をかけていろんな選手と闘って、いろんな団体に上がって、敵対していたこともあるけど、怒りも憎しみもあったけど、そういったものを越えて今日という大会ができたことが、僕がレスラーとしてやってこれた、今日の大会がその証明だと思います」 ――その場所がこの愛知県体育館という、いろんな思い出がある場所だと思う ▼棚橋「若手の頃から、IWGPのチャンピオンシップから、いろいろやらせてもらって。今日で愛知県体育館は終わりですけど、今日の思い出、この体育館の歴史、紡いできたレスラーのエネルギー。そういったものを忘れずにこれからも名古屋を盛り上げていきます」 ――年明け1月4日までまだまだ道が続いていきますし、もう(対戦を)列をなして待っている選手がたくさんいる。この先に向けては? ▼棚橋「ああ、ダメだ……感情がすごく不安定。ダメだ、泣いたり普通に戻ったり……ちょっとシッカリします、社長なんで。エースなんで。まあ見ててくださいよ。必ずいい流れ作ります。今日はありがとうございました」 ※突然ドラゴン・キッドが現れると ▼キッド「すいません。今日は本当に素晴らしい試合ありがとうごました」 ▼棚橋「こちらこそ来ていただいてありがとうございました」 ▼キッド「ありがとうございます、呼んでいただいて。それと、今日ちょっと棚橋さんにお願いがありまして。DRAGONGATEに棚橋さんと同じ(岐阜県立)大垣西高校の野球部の後輩にあたる選手がいるんですけど、ご存じですか?」 ▼棚橋「はい、知ってます」 ▼キッド「吉岡勇紀という選手なんですけど」 ▼棚橋「大垣西高校の野球部の後輩ですよね」 ▼キッド「はい。彼、1年半くらい目のケガで欠場していたんですけど、今年無事に復帰しまして。ただ、まだ本調子ではないみたいで。この間は髪の毛をかけた試合で負けて坊主になったり、まだまだちょっと自分の本当の力を発揮できていない状態が続いていて。本人すごく悩んでいると思うんですね。彼はDRAGONGATEの未来……いや、今を担う選手だと僕は思っているんでそんな彼にもう一度火をつけるためにも、棚橋さんに7月13日DRAGONGATEの最大のビッグマッチ、神戸ワールド記念ホール大会で僕と組んでいただいて、その吉岡勇紀と試合をしていただきたいなと思いまして、今日はお願いに参りました。いかがでしょうか?」 ▼棚橋「やります! かわいい後輩ですし、そしてキッドさんにはジュニア選手、大会、シリーズ通してお世話になっていますんで、僕で良ければ」 ▼キッド「ありがとうございます! よろしくお願いします。“X"の発表だったんですけど、もう棚橋さんしかいないかなと。吉岡のため、DRAGONGATEのために力を貸していただきたいと思いますので、7月13日神戸ワールド記念ホールよろしくお願いします」 ▼棚橋「任せてください。よろしくお願いします」 ※キッドは先に引き上げる ――5日後にはゲイブ・キッド選手とのIWGP GLOBALヘビー級戦を控えている ▼棚橋「本当に実戦がスタミナ強化だったりとか、タフネスが上がったりっていうのが長いキャリアの中でありますので、かなりいい状態で臨めます。ヨシッ! ゲイブもないろいろあったからな……」 【試合後の丸藤】 ――丸藤選手、あらためてこのメインイベント、棚橋選手との闘いを振り返ると? ▼丸藤「やっぱり、なんだろう……太陽よりもまぶしい太陽ですよね、彼は。年齢もさほど変わらず、キャリアも変わらず。ま、そんな中で、まあちょっと言ったことかもしんないですけど、棚橋弘至という人間にかかわった人間、レスラー、そういう人たちがたぶん組んだり闘ったりした中で、まあ今日、こういう機会を設けてくれて、僕はほんとに光栄に思いますし……。そうだな、1対1……わかんない……あるかどうかわかんない。でも、お互いが望んで、ファンの皆さんが望めば、それが実現するんじゃないですか」 ――あらためてになるが、同年代というか、同じ時代を生きてきた棚橋弘至というレスラーを、丸藤選手自身はどんな風な目で見ていた? ▼丸藤「いやいやもう、ずっと、いい意味でジェラシー感じてましたよ。同じ場にいなくても、同じ闘いをしなくても、やっぱりどっかで気になってるし、どっかで比べられるし。まあ、そんな中で棚橋弘至という、まさしく太陽のような存在、俺に持ってないものを持ってる存在……嫉妬しまくりでしたよ。でも、先に彼が引退するということで、俺はもうちょっとこのプロレスのリングで闘い続けますよ」 ――棚橋選手とはリング上でいろいろと絡んできたが、一番印象に残ってる闘いは? 丸藤「いや、どうですかね、全部ですよ。あの……U-30(のタイトルマッチ)から始まって、『G1』(で)もやりましたし、今日は今日で俺の中でメチャクチャ素敵な思い出になったし。この素敵な思い出に、もしかしたら続きがあるかもしれない。ないかもしれない。わかんないけど。彼との闘いはすべて、俺にとって最高でした」 ――棚橋選手が先に引退しても、丸藤選手の引退ロードの中で呼ぶのは? ▼丸藤「いや、1度引退した人間をね、呼ぶわけにはいかないと思うので。いやでも、新日本プロレスの社長として残るんで、必ずまた、会うこともあると思うし、もしかしたらリングじゃなくてビジネスの話になんのかもしれないし、わからないんですけども、これからもお互い……俺らもね、NOAHという団体が今、勢い、だんだん増してきてるんで、新日本プロレスに負けないように、俺らも闘い続けます。楽しかったです。ありがとうございました。最高です」 【試合後の清宮&大岩】 ▼大岩「なめんなよ、棚橋弘至! 俺はここで終わりじゃねーぞ。小島聡をブッ倒してAブロック出てやるから、その時しっかりリベンジだ、しっかり覚えとけ!」 ▼清宮「そうだよなぁ、陵平!」 ▼大岩「大丈夫ですか?」 ▼清宮「大丈夫だよ。まだまだ俺たち、こんなもんじゃないよな?」 ▼大岩「2人のタッグももっと見たいでしょ?」 ▼清宮「俺たちこんなもんじゃ、まだまだこっから立ち上がって、絶対にやり返してやるよ。クソ―、棚橋さん。初めて対抗戦した時も思ったんですけど、なんかね、凄く試合してて体は動いてるけど、頭をメッチャ使うっていうか、哲学的な部分でその25年間のこのプロレス界、トップでやってきた棚橋さんの神髄を今日しっかり感じさせていただきましたよ。でも、まだまだ俺も陵平もこんなもんじゃないんで、棚橋さんも1月までまだまだ時間ありますよね。俺もNOAHでやるべきこといっぱいあるので、NOAHをもっと盛り上げて、棚橋さんが『引退まだしたくないな』って思うぐらいぶち上げていくんで、そういう闘いも楽しみにしててください」 ▼大岩「オイ、棚橋弘至! 引退、引退言ってる場合じゃねーぞ。俺が次、勝ったら引退しないでください、寂しいじゃないですか」
『棚橋弘至プロデュース興行 TANAHASHI JAM〜至(いたる)』愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)(2025年6月29日)
○棚橋弘至&丸藤正道vs清宮海斗&大岩陵平×
来年1月4日に引退を控える棚橋が自身のプロデュース興行『TANAHASHI JAM〜至(いたる)』のメインで丸藤と組み、清宮&大岩組と対戦。必殺技競演で勝利を掴んだ棚橋は丸藤との一騎打ち実現に意欲を見せると、最後のプロレス開催となった愛知県体育館で「愛してま〜す」と雄叫びを上げた。
棚橋とNOAHの丸藤は同世代のライバルにあたり、これまでIWGPヘビー級王座戦やU-30王座戦、G1公式戦などの大舞台でも対戦。昨年5月の『ALL TOGETHER』はDDT・高木三四郎を加えた重役トリオも実現した。対するNOAH・清宮と新日本・大岩の新世代タッグも大岩のNOAH武者修行時に共闘していた縁の深いチーム。未来の再会を誓っていた2人が棚橋興行で久々の合体を果たした。
移転して新たな体育館がオープンするため、現在の愛知県体育館は今月で一般利用が終了に。今回が約60年にわたって数々の名勝負が生まれてきた同所での最後のプロレス興行となった。
第1試合に続き、今日2試合目となる棚橋は先発を買って出ると、清宮と対峙。場内は割れんばかりの「棚橋」コールに包まれると、お互いの実力を確認するかのように、基本的な動きで先制争いを繰り広げる。
先に連係を披露したのは清宮&大岩。約1年ぶりのタッグ結成とは思えない完璧なダブルアームドラッグを棚橋に繰り出すと、スピーディなタッチワークで左腕攻めを展開する。反撃のチャンスを掴めず、防戦一方となった棚橋だったが、反転式ダイビングボディアタックで流れを変えると、丸藤が躍動。大岩をトラースキックコンビネーションでメッタ打ちにすると、逆水平合戦や追尾式ロープワーク合戦で競り合った。
体力を回復させた棚橋も奮戦。フライングフォアアームやダイブ式サマーソルトドロップを清宮に叩き込む。エルボースマッシュのラリーで火花を散らすと、棚橋はビンタを連発。倒れない清宮は笑みを浮かべて狂乱ぶりを発揮し、お株を奪うスリングブレイドからスカイウォークエルボーへ。棚橋はこれを自爆させたものの、清宮もジャンピングニーでカチ上げて両者大の字に。
好機にタッチをもらった大岩は一転して猛攻へ。清宮とのダブルドロップキック、ダブルインパクト式ダイビングボディアタックで棚橋を追い詰める。すかさず大岩はアーククラッチ(キャメルクラッチ式アームロック)でギブアップを迫った。清宮も丸藤を足4の字固めで足止めする。丸藤が足4の字を反転させてなんとかカットに成功。ならばと大岩はジャーマン2連発で棚橋に追撃し、清宮とのジャーマン&シャイニングウィザードもさく裂した。大岩はドクターボムからTHE GRIPへ。
棚橋は必死の抵抗を見せると、丸藤がフックキック、虎王で援護射撃。すかさず棚橋はスリングブレイドからハイフライフローアタックを放つ。清宮が飛び込んでも棚橋のビンタ、丸藤のトラースキックで足止め。最後は棚橋が大岩にハイフライフローを、丸藤が清宮に不知火を同時敢行して、熱戦に終止符を打った。
必殺技の競演で棚橋&丸藤組が快勝。棚橋はマイクを持つと、「丸藤さん、今日は新日本に参戦していただいて本当にありがとうございました」と丸藤と握手を交わす。「U-30の頃からもう10年以上…。丸藤さん、僕は同じ時代を作ってきた仲間として、お先に引退します。ただ、シングルやってないから。それはちょっとあとで相談させていただいて」とシングルマッチ実現にも意欲を見せた。
そして、「棚橋引退まで残り200日を切ってしまいました。1日1日を大事に全力で、そして来年1月4日東京ドームまで全力で走りきるので、皆様、見届けてください! これから7月、そしてG1 CLIMAXと続いていきますので、皆さん新日本プロレスにご注目ください」と呼びかけると、最後は丸藤とともに「ということで、じゃあ、最後に名古屋の皆さん、愛してま〜す!」と拳を突き上げて、自身のプロデュース興行を締めくくった。
最後のプロレス開催となった愛知県体育館での大会は最高の形でフィナレーに。大「棚橋」コールの中、棚橋はIWGPヘビー級王者時代と同じようにリングサイドの観客たちとハイタッチを交わす。ひとりで入場ゲートの前に立ち、歓声に応えて大会終了となった。
バックステージで棚橋は「僕は毎日の試合を、日々の練習を仕事を全力でやる。そういった部分で気持ちは振り切っているんだけど、ファンの皆様、長年応援してくれた皆さんというのは……寂しいのかなって思いますけど。僕はリング上では常に元気で、疲れずに、見に来てくれたファンを少しでも楽しんでもらって。プロレスって本当にそういうものだと信じてやってきたから」と語っていくうちに感極まって涙。「まだ早いよ。まだ6月だから」と必死に拭った。
浮上した丸藤との一騎打ちについては「今、棚橋シングル戦線は行列ができていますんで。ちょっと考えます」と慎重にコメント。「ひとりのレスラーが25年という月日をかけていろんな選手と戦って、いろんな団体に上がって。敵対していたこともあるけど、怒りも憎しみもあったけれど、そういったものを超えて、今日という大会ができたことが、僕がプロレスラーとしてやってきたその証明だと思います」と大会を振り返って再び涙を見せた棚橋だったが、「感情がすごい不安定。ダメだ。しっかりします。社長なんで、エースなんで。まあ、見ててくださいよ。必ずいい流れを作ってみせます」と力強く宣言した。
そんな棚橋の前に現れたのがDRAGONGATEのドラゴン・キッドだ。キッドは棚橋と同じ岐阜県大垣市出身で、高校の野球部の後輩にあたる吉岡勇紀が苦悩していることを伝え、「棚橋さんに7月13日、DRAGONGATE最大のビッグマッチ、神戸ワールド記念ホール大会で僕とタッグを組んでもらって、吉岡勇紀と試合をしてもらいたい」と依頼。棚橋は「やります。かわいい後輩ですし、キッドさんにはお世話になっていますんで、僕でよければ」と快諾した。
丸藤との一騎打ち浮上に続き、今度はDRAGONGATE7・13神戸ワールド大会への参戦が電撃決定。G1 CLIMAX出場も決まっており、引退まで200日を切った棚橋の戦いは落ち着くどころか激しさを増すばかり。それでも逸材は名古屋のファンに約束した通り、最後の瞬間まで全力疾走で駆け抜ける。
【試合後の棚橋】
▼棚橋「お疲れ様でした」
――お疲れ様でした。疲れて……
▼棚橋「疲れてないです」
――退場するまで満員のお客さんといろんな言葉を交わして、いろんな感情を話されたと思う。今の気持ちは?
▼棚橋「僕は毎日の試合を、日々の練習を、仕事を全力でやる。そういった部分で気持ちは振り切っているんだけども、ファンの皆様、長年応援してくれた皆さんというものはやはり……(※涙ぐみながら)さみしいのかなと思いますけど、僕はリング上では常に元気で疲れずに観に来ていただいたファンを少しでも楽しんでもらって、プロレスって本当にそういうものだと信じてやってきたから。まだ早いよ、まだ6月だから。(※涙をぬぐって)すいません……僕のせいです。大丈夫です、もう大丈夫です」
――メインイベントでは丸藤選手と並び立っての闘いとなった。あらためて、どうだった?
▼棚橋「IWGP U-30王座を闘った頃、NOAHの天才、箱舟の天才……太陽の天才児もいたんですよって。でもどうしても、丸藤選手の素晴らしい動き、運動能力、そういったものに比べて自分はぜんぜん届いていないなっていう想いがあったんで。団体を越えた選手として意識していましたね。そして今日組めるっていうのが、長くプロレスをずっと続けてきたご褒美かなと思います」
――1対1でというお話もあったが?
▼棚橋「棚橋シングル戦線は行列ができていますので、まあ……ちょっと考えます」
――そして対戦相手には大岩選手、清宮選手というこれからのプロレス界を支えていく選手たちとの対戦だった
▼棚橋「清宮選手もちょっと見ないうちにすごい変わっているし、大岩は本当にあの身体に無限のエネルギーを溜め込んだ、新日本の中でほかに似てる選手がいないというか。強いて挙げるなら棚橋の若い頃のような。(※筋肉を強調する仕草で)僕もこんな……いや、誇張しすぎた。とにかく団体は違えど、こうして闘った。そして厚みを感じた。期待していますよ」
――今日の第1試合では藤波辰爾選手との闘いもあった
▼棚橋「プロレスラーになって藤波さんのような大きい選手をなんとか倒せるようにと、僕は絶対にヘビー級でやっていくんだっていうキッカケをくらた選手なんで。この先、今日が最後かもしれないし。藤波さんの張り手、効きました」
――そのあと藤波選手には解説席に入っていただいて、「引退にドラゴンストップかけないといけない」なんておっしゃっていたが?
▼棚橋「気持ちは嬉しいです。でも僕はもう覚悟を決めてますんで」
――今日の大会は棚橋選手のいプロデュースということで、魅力のたくさん詰まった試合がずっと続いていた。大会全体の印象は?
▼棚橋「1人のレスラーが25年という月日をかけていろんな選手と闘って、いろんな団体に上がって、敵対していたこともあるけど、怒りも憎しみもあったけど、そういったものを越えて今日という大会ができたことが、僕がレスラーとしてやってこれた、今日の大会がその証明だと思います」
――その場所がこの愛知県体育館という、いろんな思い出がある場所だと思う
▼棚橋「若手の頃から、IWGPのチャンピオンシップから、いろいろやらせてもらって。今日で愛知県体育館は終わりですけど、今日の思い出、この体育館の歴史、紡いできたレスラーのエネルギー。そういったものを忘れずにこれからも名古屋を盛り上げていきます」
――年明け1月4日までまだまだ道が続いていきますし、もう(対戦を)列をなして待っている選手がたくさんいる。この先に向けては?
▼棚橋「ああ、ダメだ……感情がすごく不安定。ダメだ、泣いたり普通に戻ったり……ちょっとシッカリします、社長なんで。エースなんで。まあ見ててくださいよ。必ずいい流れ作ります。今日はありがとうございました」
※突然ドラゴン・キッドが現れると
▼キッド「すいません。今日は本当に素晴らしい試合ありがとうごました」
▼棚橋「こちらこそ来ていただいてありがとうございました」
▼キッド「ありがとうございます、呼んでいただいて。それと、今日ちょっと棚橋さんにお願いがありまして。DRAGONGATEに棚橋さんと同じ(岐阜県立)大垣西高校の野球部の後輩にあたる選手がいるんですけど、ご存じですか?」
▼棚橋「はい、知ってます」
▼キッド「吉岡勇紀という選手なんですけど」
▼棚橋「大垣西高校の野球部の後輩ですよね」
▼キッド「はい。彼、1年半くらい目のケガで欠場していたんですけど、今年無事に復帰しまして。ただ、まだ本調子ではないみたいで。この間は髪の毛をかけた試合で負けて坊主になったり、まだまだちょっと自分の本当の力を発揮できていない状態が続いていて。本人すごく悩んでいると思うんですね。彼はDRAGONGATEの未来……いや、今を担う選手だと僕は思っているんでそんな彼にもう一度火をつけるためにも、棚橋さんに7月13日DRAGONGATEの最大のビッグマッチ、神戸ワールド記念ホール大会で僕と組んでいただいて、その吉岡勇紀と試合をしていただきたいなと思いまして、今日はお願いに参りました。いかがでしょうか?」
▼棚橋「やります! かわいい後輩ですし、そしてキッドさんにはジュニア選手、大会、シリーズ通してお世話になっていますんで、僕で良ければ」
▼キッド「ありがとうございます! よろしくお願いします。“X"の発表だったんですけど、もう棚橋さんしかいないかなと。吉岡のため、DRAGONGATEのために力を貸していただきたいと思いますので、7月13日神戸ワールド記念ホールよろしくお願いします」
▼棚橋「任せてください。よろしくお願いします」
※キッドは先に引き上げる
――5日後にはゲイブ・キッド選手とのIWGP GLOBALヘビー級戦を控えている
▼棚橋「本当に実戦がスタミナ強化だったりとか、タフネスが上がったりっていうのが長いキャリアの中でありますので、かなりいい状態で臨めます。ヨシッ! ゲイブもないろいろあったからな……」
【試合後の丸藤】
――丸藤選手、あらためてこのメインイベント、棚橋選手との闘いを振り返ると?
▼丸藤「やっぱり、なんだろう……太陽よりもまぶしい太陽ですよね、彼は。年齢もさほど変わらず、キャリアも変わらず。ま、そんな中で、まあちょっと言ったことかもしんないですけど、棚橋弘至という人間にかかわった人間、レスラー、そういう人たちがたぶん組んだり闘ったりした中で、まあ今日、こういう機会を設けてくれて、僕はほんとに光栄に思いますし……。そうだな、1対1……わかんない……あるかどうかわかんない。でも、お互いが望んで、ファンの皆さんが望めば、それが実現するんじゃないですか」
――あらためてになるが、同年代というか、同じ時代を生きてきた棚橋弘至というレスラーを、丸藤選手自身はどんな風な目で見ていた?
▼丸藤「いやいやもう、ずっと、いい意味でジェラシー感じてましたよ。同じ場にいなくても、同じ闘いをしなくても、やっぱりどっかで気になってるし、どっかで比べられるし。まあ、そんな中で棚橋弘至という、まさしく太陽のような存在、俺に持ってないものを持ってる存在……嫉妬しまくりでしたよ。でも、先に彼が引退するということで、俺はもうちょっとこのプロレスのリングで闘い続けますよ」
――棚橋選手とはリング上でいろいろと絡んできたが、一番印象に残ってる闘いは?
丸藤「いや、どうですかね、全部ですよ。あの……U-30(のタイトルマッチ)から始まって、『G1』(で)もやりましたし、今日は今日で俺の中でメチャクチャ素敵な思い出になったし。この素敵な思い出に、もしかしたら続きがあるかもしれない。ないかもしれない。わかんないけど。彼との闘いはすべて、俺にとって最高でした」
――棚橋選手が先に引退しても、丸藤選手の引退ロードの中で呼ぶのは?
▼丸藤「いや、1度引退した人間をね、呼ぶわけにはいかないと思うので。いやでも、新日本プロレスの社長として残るんで、必ずまた、会うこともあると思うし、もしかしたらリングじゃなくてビジネスの話になんのかもしれないし、わからないんですけども、これからもお互い……俺らもね、NOAHという団体が今、勢い、だんだん増してきてるんで、新日本プロレスに負けないように、俺らも闘い続けます。楽しかったです。ありがとうございました。最高です」
【試合後の清宮&大岩】
▼大岩「なめんなよ、棚橋弘至! 俺はここで終わりじゃねーぞ。小島聡をブッ倒してAブロック出てやるから、その時しっかりリベンジだ、しっかり覚えとけ!」
▼清宮「そうだよなぁ、陵平!」
▼大岩「大丈夫ですか?」
▼清宮「大丈夫だよ。まだまだ俺たち、こんなもんじゃないよな?」
▼大岩「2人のタッグももっと見たいでしょ?」
▼清宮「俺たちこんなもんじゃ、まだまだこっから立ち上がって、絶対にやり返してやるよ。クソ―、棚橋さん。初めて対抗戦した時も思ったんですけど、なんかね、凄く試合してて体は動いてるけど、頭をメッチャ使うっていうか、哲学的な部分でその25年間のこのプロレス界、トップでやってきた棚橋さんの神髄を今日しっかり感じさせていただきましたよ。でも、まだまだ俺も陵平もこんなもんじゃないんで、棚橋さんも1月までまだまだ時間ありますよね。俺もNOAHでやるべきこといっぱいあるので、NOAHをもっと盛り上げて、棚橋さんが『引退まだしたくないな』って思うぐらいぶち上げていくんで、そういう闘いも楽しみにしててください」
▼大岩「オイ、棚橋弘至! 引退、引退言ってる場合じゃねーぞ。俺が次、勝ったら引退しないでください、寂しいじゃないですか」