4/15 ブシロード木谷取締役が音頭 7団体の首脳&選手が馳衆院議員に要望書を提出、新型コロナによる窮状訴える
新型コロナウイルス感染症の影響によって興行の自粛が続く現状を受け、ブシロード木谷高明取締役、新日本、全日本、DDT、ノア、ディアナ、スターダム、東京女子の首脳、選手代表が15日、東京・永田町の衆議院第一議員会館を訪れ、馳浩衆議院議員(自由民主党)に要望書を提出。簡易検査キットの早期普及、年間契約している選手の休業補償を訴えた。
◇
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、プロレス界では興行の中止・延期が相次いできた。感染者数の増加傾向が止まらない中、今月7日には安倍晋三総理大臣が7都府県を対象とした緊急事態宣言を発令。効力は5月6日までで、新日本を筆頭に各団体が同日までの興行自粛を決めた。
新型コロナの影響によって興行が行えず、収入が大幅減となったプロレス界は危機的な状況となりつつある。そこで新日本、スターダムの親会社であるブシロードの木谷取締役が音頭を取って各団体に呼びかけ、新日本、全日本、DDT、ノア、ディアナ、スターダム、東京女子の7団体の首脳と選手代表が衆議院会館を訪問。馳衆議院議員、スポーツ庁、経済産業省の各担当者に現状を訴えた。
まず、木谷取締役が馳議員に要望書を提出した。木谷氏の個人名義によるものだが、「現在新型コロナウイルス感染症の問題により、弊社グループの新日本プロレスリング、スターダムのみならず、プロレス業界全体が危機的な状況に瀕しております。今の状況ですと、レスラー同士の接触が生じるプロレスにおいて、無観客試合すら開催が危ぶまれ、半世紀続いてきた我が国のプロレス業界の灯を絶やしかねません」とあるように、その内容はプロレス界全体の総意といえるものだった。
その中で要望されたのが「簡易検査キット早期普及」と「年間契約している選手の休業補償」の2点だ。言うまでもなくプロレスは、感染の可能性が高まる濃厚接触の状況を避けられない競技。そこで短時間で検査結果がわかる簡易検査キットを導入し、安全面を強化すれば、無観客試合を実施する際の障害をなくすことにつながる。また、明確に陰性反応が出れば、選手同士も安心してリング上で戦える環境が整う。木谷取締役は要望書内で「緊急を要する医療現場への配備を最優先としつつ、我々のようなプロレス団体のレスラー及びスタッフに対しても、検査の利用ができますよう」と希望した。
休業補償は深刻な問題だ。個人事業主である選手の契約形態は団体によって大なり小なり異なるが、月給制の所属契約を結んでいれば、試合の有無にかかわらずギャラが発生する。団体が大幅な収入減を余儀なくされているのが現状だが、仮に長期化するようなことになれば、木谷取締役が「新日本はここ数年間、調子がよかったから内部留保として取ってあるものがあるので、この状態が1年続いても大丈夫ですけど、1年半続いたらきついですね。それはどこの会社も同じじゃないですか」と話したように、団体崩壊という最悪の事態も起きかねない。木谷取締役は「政府の言うことをよく聞いて、それこそ要望も出さず、不満も言わず、粛々と行ってきているというのはありますので。非常にまじめに今回のコロナ対策に関しては協力している業界だと思います。その点をぜひ考えて頂き、何卒ご一考頂けたら」と訴えた。
だが、新型コロナ騒動の中、厳しい状況にあるのはもちろんプロレス界だけではない。同席した経済産業省の担当者から「私ども経産相の中で持続化給付金という制度を今回設けております。雇用者以外もフリーランスとか個人事業者を広く対象に、休業機会に対して一定額の補償をさせていただく」とプロレスラーの契約形態に該当する可能性のある制度が提案され、スポーツ庁からもスポーツイベントの再開支援策、資金繰り策の資料が用意されたが、早急な解決策となるかはわからない。今もリングに上がっている馳議員はプロレス界、プロレスラーの立場に理解を示しつつ、「個人事業主といえども一人一人が手続きをして給付を求めるというのはなかなか難しい状況にありますので、契約をしている団体の方において、何かあったら馳事務所、お取引先の金融機関、政府系金融機関とやり取りをしていただければ」、「企業に対して、選手に対して、また興行に対して、それぞれの支援メニューがありますので、それぞれに分けて相談をしていただければありがたいと思います。何かありましたらウチの馳事務所に問い合わせいただければ、つなぎ役はさせていただきます」と返答するにとどめた。
また、馳議員は統一コミッションの設立を求めた。統一組織はプロレス界において長年の懸案でもあったが、力道山が立ち上げた日本プロレスリングコミッショナー以降は誕生しないまま今に至っている。「こういう時にできればプロレス団体として、業界として、コミッショナーがあると対応しやすい」と前置きしたうえで、馳議員は「世間、社会的にも認められたジャンルとして理解されるものと思っておりますので、改めてそのことも今日のまとめ役の木谷さんに宿題としてお伝えしておきたい」と逆要求。これを受けて木谷取締役も「音頭取りますよ。そういうのがあればオースター戦とかチャリティー的なこともやりやすい」と前向きな姿勢を見せた。
選手たちは今、いつ訪れるかわからない試合再開の時を待ちながら、日々練習し体調管理に努めている。新日本の棚橋弘至は「試合ができないということで、選手としても今後の生活には不安があるところだと思いますし、かといって現状をどうすることもできません」と選手に共通するであろう思いを口にし、「僕としてはメジャースポーツと言われるプロ野球、サッカー、大相撲、そういうスポーツが再開していく中で、プロレスがしんがりでもいいんじゃないかなと。一番最後でもいいんじゃないかなと。プロレスができるようになる時に日本のエンタメ、スポーツ業界が復活という形になればなと思っています」との考えを示し、前向きに興行再開を見据えた。
☆提出された要望書
衆議院議員 馳浩様
令和2年4月15日
株式会社ブシロード
取締役 木谷高明
要望書
拝啓 平素は格別のご厚情を賜り厚く御礼申し上げます。
現在新型コロナウイルス感染症の問題により、弊社グループの新日本プロレスリング、スターダムのみならず、プロレス業界全体が危機的な状況に瀕しております。
今の状況ですと、レスラー同士の接触が生じるプロレスにおいて、無観客試合すら開催が危ぶまれ、半世紀続いてきた我が国のプロレス業界の灯を絶やしかねません。
つきましては、以下の2点について要望申し上げます。
1.簡易検査キット早期普及
緊急を要する医療現場への配備を最優先としつつも、我々のようなプロレス団体のレスラー及びスタッフに対しても、検査の利用ができますよう簡易検査キットの早期普及にご尽力頂けないでしょうか。
2.年間契約している選手の休業補償
現在当社グループも含めた一般的なレスラーの契約形態ですと、休業補償を受ける事が出来ません。このような年間契約を結んでいる選手につきましては、正社員相当の扱いとして受給できるようにご検討頂けないでしょうか。
何卒、ご一考頂けますと幸いです。
敬具
【各選手の発言】
▼棚橋「新日本プロレスの棚橋弘至です。現在、試合ができませんので、選手は試合再開の時を待ちながら道場で時間をしっかり取りまして、選手が集中しないようにしまして練習に励んでおります。試合ができないということで、選手としても今後の生活には不安があるところだと思いますし、かといって現状をどうすることもできませんので、僕としてはメジャースポーツと言われるプロ野球、サッカー、大相撲、そういうスポーツが再開していく中で、プロレスがしんがりでもいいんじゃないかなと。一番最後でもいいんじゃないかなと。プロレスができるようになる時に日本のエンタメ、スポーツ業界が復活という形になればなと思っています」
▼諏訪魔「全日本プロレスの諏訪魔です。今、全日本プロレスは当然、皆さんと同じように試合の方は自粛という形になっています。4月はチャンピオン・カーニバルという全日本プロレスでシングルのリーグ戦ですね。目玉の月なんですが、それがすべて中止ということで、プロレスファンの方も凄く悲しんでる声が僕の方にも届いています。そして今回の要望にある簡易検査キットの早期普及ということで、ファンの皆さんが安心してプロレスをみられることが第一だと思いますので。みられるようになったらですね。だからそのためにもまずはレスラーが大丈夫なんだと安心をしてもらえるようなことを思ってもらうことも一つ大切じゃないかなと思いまして、検査キットの早期普及というところは強く望みたいなと思っております。棚橋選手が言ったと同様に、全日本プロレスの道場で練習を選手が時間を分けて、密集しないように練習している状況です。本当に練習環境がない状況ですね。ジムも閉鎖している。ランニングするにしても人が物凄くいっぱいいるし、とにかく困っている状況ですね。なので、みんな待つしかないんですけど、いつか再開できる日を夢見て、一緒に頑張って準備をしておきたいなと、励んでいきたいなと思っている所存です」
▼HARASHIMA「DDTプロレスのHARASHIMAです。よろしくお願いします。僕たちDDTも無観客試合の配信とかもあったんですけど、それも今、会場、場所の確保ができなかったりして、収録試合も流せない状況にあるんで、検査とか安全を確認できるものがもしできるのであれば、この状況の中でできることも増えるのかなと思います。早く安心して試合ができる状態になるのが望まれますけど、早く試合ができるようよろしくお願いいたします」
▼丸藤「お疲れ様です。プロレスリング・ノアの丸藤正道です。本日は誠にありがとうございます。今年から我々プロレスリング・ノアはサイバーエージェントさんの傘下として、隣のDDTさんとともにやっている中で、会場を取れないということで、無観客試合を行い、それをDDTユニバースというものとサムライTVというもので現在放送しているんですけど。選手がやはり会社に属しているからこそ、現在お給料というものをいただいている中で、選手というのはおそらくそのお給料をいただいている形の中で自分たちの危機感よりも会社の危機感の方が非常に大きくて。会社にお金が入ってこなければもちろん選手にもお金が入ってこないという状況の中で今やっていかなくてはいけない。その中でもネットの放送とか、そういう部分で資金の調達、グッズの部分、限りなく集客をして興行を行うという部分からしたら非常に会社としての収入が落ちてしまいます。そういう点で選手、スタッフにもお給料という部分がいつかは底を尽きてしまう。やはりそういった部分で今回、木谷会長の要望というのは私たちにとってもありがたいですし、業界全体としても意見として今回この機会をいただいて非常にありがたく思っています。その中で僕の中ではプロレスというジャンルがまだまだ狭い一つの村だと思っていて、おそらくプロレスを知らない人、認識がない方が非常にたくさんいる中でも、このご時世SNSというものがありまして、そういう中でファンの人たち、プロレスに興味を持っていただいている人たち、プロレスというものに元気であったり勇気であったりをいただいている意見を非常にいただくので、僕たちもそういうものをやっぱり絶やしてはいけないと思います。その中でもこういう危機的状況が訪れてしまっているということで、ノアはじめプロレス界全体で日本というか地球全体だと思うんですよ僕はプロレスで元気を与えられるというのは。プロレスをみたことある人は非常に強く感じると思うので、僕たちもそれを引き続きしっかり行っていけるようにしていきたいと思っているので、ぜひともご検討をお願いできたらと思います」
▼井上京子「ワールド女子プロレスディアナの井上京子です。ディアナは予定している試合を全て延期と中止にしております。選手の練習は自宅で練習するように。道場には一切来させておりません。自分と何人か飲食の方をやっているんですけど、そちらは自分は一切休んでおります。私事ですが、ディアナは8周年を迎える予定でしたが、そちらの後楽園も中止しました。そして道場を新しく今月から道場開きをする予定でしたが、そちらもオープンできずにおります。今日はこちらにプロレス界にとって良いことと思ったので賛同させていただきました。よろしくお願いします」
▼岩谷麻優「自分事なんですけど、2月19日のリアルバースデーイベントというのをやる予定だったんですけど、中止になってしまい、後楽園ホールも無観客試合で生配信という形になったりとか、いろいろな興行が中止になっている中で、自分たちはプロレスラーとして、職業プロレスラーなのに試合ができないというもどかしさが凄くあって、このような検査キットなどを実施していただければ選手も安心して試合できますし、お客様にも早く試合を見ていただきたい気持ちが大きいので、何もせずずっとこのまま終息を待つというよりも、このように行動を移してくださったことに感謝しています。これが女子プロレス界、プロレス界全体がまた盛り返していけることになればと思います。ありがとうございました」
▼坂崎ユカ「私は東京女子プロレスの坂崎ユカと申します。たくさんの選手が要望をおっしゃってくださったので、特に言うことはなくなってきたんですけど、DDTの道場はビルにありまして、上の階が保育園なんですね。なので最初の頃、コロナの初期は無観客試合だったりとか道場マッチ、イベントなども少人数で行って対応をさせていただいてたんですけど、やはり保育園が近くにあり、電車での交通手段になりますので、世の中の状況でそういうのも自粛していくようになりまして、そしたら練習だったりとか、そういう選手のモチベーションもどんどん下がっておりますので、早くコロナが収束するように私たちも自粛だったり対応を練っていきますので、検査キットだったりとか、補償をしていただいて、皆さんとご協力しながら対策を取りたいので、また歩み寄っていきたいなと思っております。よろしくお願いします」