9/7【NOAH】12年ぶりリーグ戦出場へ武藤敬司インタビュー N-1という名の挑戦「敵は己」
ノア年間最大のリーグ戦『N-1 VICTORY 2021』で一つの“目玉"となるのが武藤敬司の参戦。シングルのリーグ戦に出場するのは、2009年の全日本チャンピオン・カーニバル以来、実に12年ぶりとなる。今年GHCヘビー級王座戴冠を果たして深みある防衛ロードを歩み、6月のさいたまスーパーアリーナでは衝撃のムーンサルト解禁で感動と話題を届けた。そしてシングル連戦となるN-1出場も決断。58歳にして己への“挑戦"を続ける天才に現在の心境を聞いた――。
【武藤敬司インタビュー】
――シングルが続くN-1に向けて、まず現在のコンディションは?
▼武藤「いたって普通というか、いい年こいてると体調が良いってことはそうそう無いからねえ」
――まずN-1出場に際しての率直な思いというのは?
▼武藤「ある意味でいえば俺にとっては“挑戦"ですから。GHCのチャンピオンシップと比べても、リーグ戦っていうのは俺にとっては凄く厄介な存在であって。リーグ戦っていうのは久しく出てないんじゃないかなあ」
――2009年のチャンピオンカーニバル以来となる
▼武藤「そうでしょ? リーグ戦ってロングランだから、勝ち抜く難しさは俺も知ってるしね。だからホントに挑戦ですよ」
――ここ数年は“武藤敬司のシングルマッチ"自体がスペシャルなものだったが、今年に入ってからはGHCのタイトルマッチが続いたうえに今度はリーグ戦という
▼武藤「まぁGHCを戦い抜いて自分のなかでは自信になったし、自信をつけた次にどうするか。そこにN-1というものがあった。ホントに自分自身への挑戦だよね」
――出場するために段階を踏んでいったと
▼武藤「うん、やっぱり現役続けてる以上は、こういうイベントが存在するのであれば、チャレンジしたいと思うのはレスラーの性(さが)だと思ってるし」
――G1もチャンカーも制覇してきたが、リーグ戦を戦い抜くうえで改めて重要なこととは?
▼武藤「本当は全体を通した想像ができればいいんだけどさ、ホントに今はそんな余裕もなく。しかも一発目が杉浦戦(9・12後楽園)なんだよ。チャンピオンシップじゃないけど、この杉浦戦に集中していかないと次が無いと思ってるから。とにかく一個一個、その積み重ねだと思ってますね」
――武藤敬司から見て杉浦貴というレスラーの印象は
▼武藤「今ちょうど油がのってるし、ノアの中でも一番勢いを感じさせる選手なんじゃないかなあ、なんて思ってますね」
――かなりタイプが違うが?
▼武藤「まぁそれほどお互い、まだ良く知らないからね。そこが楽しみでもあるし」
――とはいえリーグ戦だけに杉浦貴を味わうというよりは、勝ちを取りにいく試合になりそう?
▼武藤「そうだね。最初がヤマ場だと思ってるからねえ」
――昨年末のGHC戦「潮崎vs杉浦」を“有酸素プロレス"と評していたが、そういう試合にはならない?
▼武藤「どうだろ。まぁプロレスの良し悪しっていうのは時間じゃないと思ってるからね。お客様の心にどう刻むか、っていうのが大事なワケで、そこは有酸素だろうが無酸素だろうが関係のないことだと思ってるからね。もしかしたら1分でも“伝えることができる試合"ができるかもしれないからさ」
――対する杉浦は「武藤敬司? 今年入門した新弟子だろ? 逆エビ固めか瞬殺だ」と言っている
▼武藤「いや別に…いたって新弟子ですから(笑) 新弟子らしいフレッシュな試合に、フレッシュな闘いをしたいと思っていますよ(笑)」
――自身としてはどんな試合をして、勝ち方を?
▼武藤「まだそこまでイメージしてないんだけどね。逆に想定してもアレなんで、そこは行きあたりばったりでいこうかなって」
――公式戦が3つしかないだけに、一つでも落とすと大きく後退する一戦が重いリーグ戦になる
▼武藤「うん。あと怖いのは故障であったり。やっぱり連戦だからさ。自分の中で集中力が続くかどうかっていうのも不安ですよ。今は試合やる前だからこうやって元気なコメントもできるけど、いざ始まったら息切れしたりするかもしれない。昔からリーグ戦ってずっとそうだったからさ。調子いい時ばっかりじゃねえからさ。それがリーグ戦の怖さっていうか」
――試合を重ねるごとに新しい怪我が生まれたり、予想以上に疲れが溜まってきたり…
▼武藤「そうそう。ただ、それでも俺がこなしてきたG1とかチャンピオン・カーニバルとかは、もっと連戦だったりしたから。今回は若干日にちが開いてる分だけね、余裕があると思ってるんで」
――同じAブロックには他に清宮海斗、征矢学がいる
▼武藤「俺もこういうリーグ戦、何度も経験してきてるけど、だいたいこういうリーグ戦ではスターが生まれるんだよ。浮上するヤツ、その時のスター、その時輝いてるヤツっていうのがさ。で、えてして若いヤツなんだよね。俺たち“闘魂三銃士"っていうのが世にバーン!と出たのもさ、第1回のG1 CLIMAXだった。G1というリーグ戦で俺たちが勝ち上がって注目を浴びるようになったワケで、その意味では清宮なんかは怖いよね。そういう条件が揃ってるっていうか」
――自身は清宮とのシングルは2戦負け無しだが?
▼武藤「いや、それでもこういうリーグ戦になったら分からないから」
――リーグ戦には、誰かを知らずと祭り上げてしまう魔物が存在すると
▼武藤「そうそう。で、お客様のほうも連戦で見ているワケだから、どんどん感情移入してくるんだわ。舞台も自然と整っていくし。ただ現在はコロナだからね。そういうのも難しいのかもしれないけど。その熱っていうのはこっちに伝わりづらい部分もあるんだよね」
――いかに魔物を味方につけることができるか
▼武藤「うん、だから清宮にとってはある意味チャンスだと思うよ。俺は彼と闘う立場だけど、普通に冷静に見てみたらね」
――征矢学についても…
▼武藤「うん、だから今言ったことが征矢になる場合もあるよ。彼は今、ノアで停滞する状況が続いてるのかもしれないけど、実力も経験も持ってるワケであって、何かのチャンスでバーン!と伸びる、このN-1を通じて伸びる可能性もあるからね。やっぱり手は抜けないですよ」
――決勝トーナメントでやってみたい相手や、別ブロックで気になる存在というのは?
▼武藤「他に誰が出てるかあんま良く知らねえんだよ(笑)」
――いやいや…今年は本当にメンバーが豪華で、船木誠勝だったり、藤田和之だったり…
▼武藤「藤田とか俺、やりたくないねえ…」
――桜庭和志だったり…
▼武藤「桜庭もイヤらしいねえ」
――その中で気になる選手は?
▼武藤「やっぱり藤田、船木とか興味あるねえ」
――藤田とは『やりたくない』と数秒前に言っていたが…
▼武藤「いや、船木ともやりたくないし、藤田ともやりたくない。ただ、リーグ戦だと上がってくればやらざるを得ない。えてしてレスラー側がやりたくない試合のほうがさ、お客様にとっては見たい試合だったりするからね。だいたいそういうモンだから」
――なるほど。船木や望月成晃、田中将斗とM's alliance対決で決勝をやってみたい気持ちは?
▼武藤「そうっすね。同じユニットとして、M's allianceとしての“主張"をしてみたいというか」
――決勝もM's alliance対決になれば、次のGHC戦(王者・丸藤)もM's allianceになる
▼武藤「全部M's allianceで染めちゃうっていうのもアリだよね」
――M's allianceとしてのこれまでの手応えは?
▼武藤「立ち上げてから俺がベルトを巻いてたし、今は丸藤選手が巻いてる。個々には活躍してる感があるけど、まとまって何かやりたいっていうのはあるね」
――N-1で個々それぞれに活躍して、ユニットとして盛り上がる機運を高めたい?
▼武藤「うん。昔BATTっていうユニットやってたけど、M's allianceもそれに近いよね。DRAGONGATEとかZERO1の選手もいたりしてね。まぁそれが(スケジュールの都合などで)やりづらさにもなるんだけど。でもせっかく集まってるワケだから」
――今までの話を総合して、改めてどんなN-1にしたい?
▼武藤「いやもう、やっぱり俺自身への挑戦ですよ。敵はやっぱり藤田だ、船木だ、杉浦だ、じゃないんですよ。俺にとっての敵は武藤敬司であり、己ですよ」