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2/21【NOAH/コメント全文】武藤引退、蝶野と“サプライズ引退試合"展開 「プロレス人生、最高に幸せでした」

『KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST" LOVE 〜HOLD OUT〜』東京ドーム(2023年2月21日)

 “天才"武藤敬司が同期・蝶野正洋との“サプライズ引退試合"を展開。最後までファンを驚かせながら、38年4ヵ月におよんだ華々しいプロレスラー生活に終止符を打った。

 オールスター戦さながらのラインナップとなった東京ドームで、自身に憧れてレスラーを志した新日本・内藤哲也相手に引退試合。歴代のテーマ曲メドレーを前奏に、ドームを包む大武藤コールの中で最後の入場花道を歩いた。

 怪我に苦しみ続けた現役生活を象徴するかのように、両足ハムストリングス(太もも裏の筋肉)肉離れが完治せぬまま。容赦なく足を攻めた内藤にはブーイングも飛んだが、武藤も袈裟斬りチョップ&DDT(橋本真也)、エメラルドフロウジョン(三沢光晴)と天に召したライバルたちの得意技で反撃に転じてドームも酔いしれた。

 だが、ムーンサルトプレスの解禁は2度にわたって躊ちょして放てず。最後はドラゴンスクリューやシャイニング・ウィザードといった愛ある“逆”武藤殺法からのデスティーノを浴びて力尽きたが、完全燃焼で戦前の予告通り「白い灰」になった……かと思われた。

 ある意味で“本番"はここからだった。マイクを握った武藤は、「今日で引退しますが、武藤敬司のプロレス人生、最高に幸せでした。自分がいなくなっても、プロレス界はますます驀進していきます!…というところで、自分で歩いて帰れるし、エネルギーも残ってるし、まだ灰にもなってねえや。どうしてもやりたいことが一つあるんだよな。蝶野! 俺と闘え!」とPPV解説席に座っていた同期・蝶野を指名。すると蝶野もおもむろに席を立ち、往年のテーマ曲とともにリングインすると、“三銃士世代"で埋まった場内は興奮のるつぼと化した。

 もともと武藤はデビュー戦の相手であり、永遠のライバルでもある蝶野相手の引退試合を熱望していたが、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などの影響で、8年以上試合から遠ざかっている蝶野は「(コンディションが)間に合わない」ことを理由に断っていた。

 それが土壇場で“盟友"のサプライズ引退試合に一肌脱いた形。しかも武藤は来場していた元レフェリーのタイガー服部さんにレフェリングを依頼し、辻よしなりアナウンサーが実況を務め、“三銃士時代の新日本"が一瞬にして甦った。

 私服姿のままの蝶野とまずはロックアップ。サミングからのビンタで押し込んだ蝶野がシャイニング・ケンカキックからのSTFに持ち込むと、たまらず武藤はタップアウトした。

 引退試合“2連敗”での最後。そのまま蝶野と万感の抱擁。最後までファンを驚かせ続ける圧巻の“引退試合"を繰り広げた武藤は、古舘伊知郎さんが朗読する惜別の詩に耳を傾けると、涙混じりの「武藤!」「武藤!!」の声に見送られながら、ゆっくりと花道奥に歩みを進めた。

 花道奥に達したところで、最後のコールがなされ、10秒間に渡ってド派手な花火が打ち上げられた。リングに向かって振り返り、まばゆい閃光のなかで最後のLOVEポーズ。38年4ヶ月間に渡ってプロレス界を明るく照らし続けた天才・武藤敬司は、最後までありったけの光を放ちながら、そのプロレスラー生活にピリオドを打った。

【試合後の武藤】

※松井珠理奈さんから花束を受け取ると

▼武藤「おかげさまで自分の足で…。そこまで車椅子で来たんだけど、自分の足で帰りました」

――引退試合を全て終えて、今の感想は?

▼武藤「感想? それほど悲しくもないし。ここまでの道のりのほうがしんどかったな。終わってみたら、やっと終わったかなって感じで」

――対戦相手の内藤選手に関しては?

▼武藤「うーん、もしこのあとプロレスビジネスが落ちたらあいつのせいだよ。そういうのを観察しておきますよ

――試合途中、袈裟斬りチョップやDDTを出していたが?

▼武藤「ただ、やっぱり慣れた技じゃないから、なかなか決めるにまでは至らなかったですね。しかも自分のムーンサルトも飛ぶガッツがなくてね。昔、プロレスのためには足の1本や2本あげてもいいようなことを俺は言ったことあるんだけど、やっぱりあげれなかったな。ちょっと俺、ウソつきだよ。あそこで躊躇しちゃったよ」

――迷った場面があったが、あの時はどういうことを考えていた?

▼武藤「いやもう、家族の顔とかさ、医者の顔とか。しかもみんな怒ってる顔なんだよ。それが出てきてね。躊躇しちゃったよ」

――3カウント聞いた瞬間はどうだった?

▼武藤「天井見てたよ。広いなあ、天井って。ああやって東京ドームの、あんなど真ん中で仰向けで寝れるのもそうないことだし、嬉しかったですよ」

――試合後に蝶野さんを指名したのは?

▼武藤「これがね、どうしてもやりたかったことなんだよ。なんだかんだ言って、蝶野はデビュー戦を一緒にやって、締めくくりはやっぱり蝶野にしたかったんだよ。よくあいつあそこまで動けたよ。大したもんだよ。アドレナリン出てたよ、あいつ。嬉しかったっす。期待に応えてくれて」

――最後、10カウントゴングがなかったが?

▼武藤「やっぱりなんとなくあっさり終わりたい、全体的に。カラッとしているじゃん、俺。あんまりジュクジュクジュクジュクしたくないじゃん。いい終わり方だと自分でも思います」

――ゴールのないマラソンと言ったプロレスをゴールしてみて、どんなマラソンだったと思う?

▼武藤「いや、やっぱり今年で39年間、途中で厳しかったこともあるよ。なんて言ったって怪我が絶えなかったし。今回もこの1ヵ月、本当にハムストの肉離れには参っちゃってね。幸いにも今日そこまで…治療とかリハビリとか一生懸命やったから、思った以上に自分の中では動けてよかったですよ。これは誰しも抱えることだろう、怪我とかね。なんかゴールできてよかったです。本当に多くのレスラーがこういう風に引退試合ができてない中で、本当に俺は幸せなプロレス生活でした」

――これをやっておけばよかったという悔いはある?

▼武藤「試合の中の悔いなんかすげぇあるよ。なんかもう少しできなかったかなとか、今は反省しながらこの道を。次がないのにね。次がないのに、次がこうしたいな、なんていうような気持ちで、まだ自分でもしかしたら引退するって実感できてないのかもしれない。こうしたらよかったのになとか、細かいこといっぱいあるんだよ」

――もう1回リングに上がりたいという気持ちは?

▼武藤「いや、もうケジメつけたんだから。そんなこと言わないでくれよ。後ろ髪引かれるじゃんかよ。もう辞めるよ」

――これからの夢は?

▼武藤「いつも言ってるじゃん。もう普通のオジサンになりたいって。普通のオジサンになるのって、なかなか大変なんだよ。やっぱり人工関節の足も抱えているし、なんとなくまともに歩けないし。普通のオジサンはまともに歩けるからな。ゴルフ行ったり。そういうのもできないんだから、俺。だから、普通のゴルフ行けるような体になりたいですよ。思ったより悲しくもなんともねえな。ジワジワ来るんだろうなあ。たぶんね。あとからジワジワ来るんだよ。明日から何すればいいのかな、俺」

――トレーニングはする?

▼武藤「トレーニングはするよ。トレーニングしないと、やっぱり人工関節とか、骨が弱ったら合わなくなってくるからね。そういう意味も込めて、普通のオジサンになりたいって言ったんだから。やっぱり自分で歩いて活動できるぐらいに常にしたいというか」

――トレーニングはライフワーク?

▼武藤「そうですね。ルーティーンで、そんなに1日のルーティーンは変えないつもりでいますよ」

――体が元気になってきたらどうする?

▼武藤「これだけ盛大に祝ってもらって。もしかしたら、また復帰したら詐欺で捕まっちまうよ」

――これからのプロレス界にこうあってほしいというメッセージは?

▼武藤「今日まじまじと古舘さんの詩を聞いてて、これでなんか猪木プロレスの終焉だっていうようなことを言ってましたよね。俺もそう思うし、たぶん今から新しいプロレスというものが生まれてくるんじゃないですかね。この興行もPPVとかで放映したりして、どのぐらい見ている人がいるのか全然わからないんだけど、そういう部分でいって、大きなお金が集まってくれば、レスラーも豊かになったりとかして。豊かになってくればグローバルで勝負できたりして。それがきっと新しいプロレス界の未来かな、なんて思う中で。今日のこの全ての興行がそういう糧になってくれればなんて思ってます。皆さん、39年間本当にありがとうございました。どうも」

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