3/5【ZERO1】太嘉文引退、6年半のレスラー人生に終止符も「リングを去っても戦うことをやめません」

『澤村建設PRESENTS ZERO1創立22周年記念大会』東京・後楽園ホール(2023年3月5日)
太嘉文引退試合 ○菅原卓矢&近藤修司vs佐藤嗣崇&太嘉文×

　太嘉文が引退試合で先輩・菅原に介錯され、6年半のプロレスラー人生に終止符。「リングを去っても戦うことはやめません」と第二の人生へ向けて誓った。

　太嘉文はWRESTLE-1のプロレス総合学院出身で、2016年9月にタナカ岩石のリングネームでデビューした。W-1が活動休止後の2020年8月にZERO1入団を果たし、太嘉文に改名。昨年3月には松永準也と組んでインターコンチネンタル王座を戴冠したが、29歳の若さで引退を決意。この日、プロレス学院出身の後輩・佐藤をパートナーに、菅原&近藤の先輩二人と対戦した。

　最後のリングに立った太嘉文はまず近藤相手に立ち向かったものの返り討ちにされ、その場飛びフットスタンプを食らってしまう。それでも師匠で付き人についたこともある武藤敬司ばりのドラゴンスクリューで突破口を開いた。

　その後、菅原にアームブリーカーからのチキンウイングアームロックと腕攻めで攻勢に出た太嘉文。スピアー、ショルダーアームブリーカー、払い腰と猛攻を浴びせ、一意専心で捕らえた。佐藤も近藤のカットを必死に阻み、先輩の最後の勝利を後押ししようとした。

　だが、耐えた菅原が後頭部へのローキック、ジャンピングハイキックで逆襲。近藤もランサルセで援護射撃する。佐藤の加勢を受けて太嘉文はエルボーを連発して先輩二人に立ち向かったが、倍返しされてしまう。見かねた佐藤が再び飛び込んでも、太嘉文は「来るな!」と助太刀を拒否。1対2の状況で菅原のランニングエルボー、近藤の延髄ラリアット、菅原の延髄ラリアットを立て続けに食らっても、太嘉文は「何度でも立ち上がる」の大谷イズムでなおも立ち向かった。

　容赦なしの菅原は張り手を乱れ打ち。太嘉文も前のめりに倒れながらも菅原にしがみついて最後まで食らいつく。ならばと菅原が延髄斬りを放つと、近藤はキングコングラリアットをさく裂。さらに菅原がラリアットを叩き込むと、両手を広げて真っ向から受け止めた太嘉文は3カウントを聞いた。

　太嘉文が引退試合で大往生。試合後、工藤めぐみGMから花束を贈呈されると、大きな拍手を浴びてマイクを手にして「まず最初に菅原さん、近藤さん、ありがとうございました。そして嗣崇、ありがとう」と感謝。「僕に一番最初にプロレスを教えてくれた人、受け身から教えてくれた人、そしてZERO1に入って自分が意識して目標になった人、そして一番最初の後輩と戦えて、俺はもしかしたら幸せなのかもしれないです」と続けた太嘉文は「リングから去っても俺は戦うことをやめません!」と宣言。「さよならは言わないです。またな、ZERO1!」と別れを告げると、最後に引退テンカウントゴングを聞いてリングを降り、6年半のレスラー人生に終止符を打った。


【試合後の太嘉文&佐藤】
▼太嘉文「終わっちった。あっけなかったな、意外と」

▼佐藤「正直ここでは岩石さんと呼ばせてもらって。僕、WRESTLE-1やめてZERO1に入るまで、正直WRESTLE-1やめてからWRESTLE-1の人がいる団体って話しかけづらい
部分があったんですけど、僕が辞めて一番電話した野隆文さんなんですよね」

▼太嘉文「そうだった? プライベートの話か。いいか」

▼佐藤「すぐ電話して、『佐藤君どうした? 』と。WRESTLE-1やめてもご飯食べに行く仲で、その中で僕が『ZERO1絶対入った方がいいですよ』ってずっと言ってて。WRESTLE-1の量でも横のベッドでずっと共にしてきた先輩野隆文さんが引退するっていう。武藤さんが引退するとか、そういう人と違って、やっぱりまだまだ一緒に長い期間やる人間だと思ってたし、ライバルだと思ってたんで、そんな人がこんな早く引退することに正直、実感がわいてないという。来週以降、太嘉文さんがいない会場が僕の中で想像できないのが現実で。まだ実感わいてこないんで何とも言えないというか、わかんないですよ(苦笑)」

▼太嘉文「一番最初の後輩で、最初から最後までずっと情けない先輩だったな」

▼佐藤「いやいや」

▼太嘉文「この体のでかさとプロレスのセンスすごいよね。それはずっと思ってたから。ホントありがとう。最後指名して良かった」

▼佐藤「あれ覚えてますか? 僕がWRESTLE-1の練習生の時に試合形式の練習をやっていて、僕が全然できなくて、それこそボロカス言われたんですよ。僕泣いちゃって」

▼太嘉文「覚えてる、覚えてる」

▼佐藤「励ましてくれたのが太嘉文さんなんですよ。そのぐらい優しい先輩で近くにいる存在っていう僕の中では一番ですね」

▼太嘉文「彼にもそうですけど、今の後輩に対して、先輩として俺自身、何ができたのかぶっちゃけわからないです。ただ辞めるってなった時に『兄貴という存在がいなくなるんだ』って言われて、初めて自分ってそこまで必要されてたのかなって意識するようになりました。自分でわかるようになりました。あとプロレスラーとしてもまだ意外と俺って必要とされてたんだなって感じます」

▼佐藤「6年半弱?」

▼太嘉文「なかなかうまくいかなかったけど、それでもガムシャラにやってたし、何かつかめるんじゃないかって思ってたし、自分の中の何かを信じてやってきたし、彼ら含めて後輩ずっと見てたし、そういうの全部含めて最後の最後まで何者かになりたかったです。何者かになろうとしてました、ずっと。何者かに慣れたのか俺はわからないです。最終的に決めるのは見てくれた人たちだと思ってます。言葉にすると一言だけ。全部含めてありがとうございました。そしてこれからも俺は、太嘉文は人間としても戦いという舞台から降りません。これからもよろしくお願いします。ありがとうございました!」

▼佐藤「プロレスラーは引退って怪しい言葉何で僕は待ってますよ。また5年後、10年後、ZERO1のリングで。僕は期待してますよ」

▼太嘉文「じゃあ約束だ。その時は組んで。覚えてる? 2019年の2月のイコス上尾。俺の一番最初の復帰戦。また組もうと言って、今日やっと久しぶりに組んだね」

▼佐藤「そうか。2019年、WRESTLE-1のイコス上尾の復帰戦で組んで、今日引退で組んで、もう一回、復帰戦で組みましょう」

▼太嘉文「あの時またどっかで組みましょうって言って3年後に組んだんで、またわかんない。3年後、5年後、10年後、どっかでタッグ組みましょう」

▼佐藤「お願いします」

▼太嘉文「明日からまた生きます。ありがとうございました!」