【新日本】棚橋が最後の凱旋でGLOBAL奪取ならずも万感の「愛してま〜す!」 引退試合へ外道「相手用意しますから」 2025/11/2

『棚橋弘至〜衣錦還郷』岐阜メモリアルセンター で愛ドーム(第1体育館)(2025年11月2日)
IWGP GLOBALヘビー級選手権試合 ○辻陽太vs棚橋弘至×

 棚橋が最後の地元・岐阜凱旋で大奮闘を見せたものの、辻に敗れてGLOBAL王座奪取ならず。それでも万感の「愛してま〜す!」を決めると、11・8安城大会でYuto-Iceと一騎打ちを行うことが決定的に。さらに、バックステージでは外道が姿を現し、引退試合に向けて「もしあれだったら、俺、(対戦相手を)用意しますから」と注目発言が飛び出した。

 来年の1・4東京ドーム大会で引退を控える棚橋にとって今回が最後の地元凱旋。そんな舞台で元付き人であり、プロレス入りのきっかけを作った立場でもある辻の保持するGLOBAL王座に挑んだ。

 両者は今年のG1公式戦で、辻のヤングライオン時代以来、久々の一騎打ち。辻が猛攻に出たものの、しのいだ棚橋がハイフライフローで激勝し、G1通算100勝の偉業を樹立した。辻にとっては今回の師弟対決が最後の棚橋超えのチャンスとなった。

 地元・岐阜に集まった3742人(札止め)の観客から大歓声を受けた棚橋だったが、辻に出鼻をくじかれる。腹部への集中砲火を受けて苦もん。客席からは逸材への声援が何度も飛んだものの、辻の逆エビ固めに捕まるとうめき声を上げるしかない。逆水平でメッタ打ちにされ、強烈な串刺しニーの餌食になった。それでもドラゴンスクリューから猛追に転じるが、ハイフライフローは時期尚早。雪崩式ブレーンバスターで叩きつけられ、逆エビ固めに再度捕獲される。

 棚橋は大「棚橋」コールを受けると、耐えに耐える。根負けした辻は自ら技を解き、投げ捨てジャーマンからジーンブラスターを狙って突っ込んだ。これを読んだ棚橋は起死回生の低空ドロップキックで迎撃。ダルマ式ジャーマンスープレックスホールドで一矢報いる。負けじと辻は棚橋ばりにトップロープを飛び越え、掟破りの逆ハイフライフローを投下。しかし、これを自爆させた棚橋が負けじと掟破りの逆ジーンブラスターをぶち込むと、場内はさらに熱を帯びた。

 うつぶせに倒れる辻にハイフライフローを投下した棚橋は、ジーンブラスターでの迎撃を狙われてもハイフライフローアタックで押し潰す。そして、正調ハイフライフローでダメ押しを狙うも、辻は間一髪で回避。自爆を誘うと、ジーンブラスターをぶち込んで、両者大の字に。

 ここでも棚橋に声援が集中すると、棚橋はビンタをぶち込むが、辻はノーモーションのヘッドバットで返答。強烈な一撃に大きく場内がどよめく中、辻は再度のジーンブラスターへ。棚橋はこれを首固めで丸め込むと、さらには中邑真輔のかつての得意技ランドスライドをズバリ。またもハイフライフローで突っ込んだものの、辻はヒザを立てて迎撃すると、執念のジーンブラスターを突き刺して3カウントを奪った。

 棚橋は最後の地元凱旋でベルト奪取ならず。辻がGLOBAL王座初防衛を果たしたが、棚橋もキャリア最後の岐阜大会でエースとしての意地を見せた。

 マイクを持った辻は「棚橋さん、何度も言うように、俺はあんたがいなければ、このセルリアンブルーのリングに立つことはなかっただろう。ずっとあなたの背中を追いかけてきた。そして、今日、初めてあなたに勝つことができた」と感慨深げに語りかける。そして、「俺はさ、エースになるつもりはない。棚橋弘至になるつもりもない。俺は棚橋弘至、あんたの存在を超える。大丈夫だ。新日本プロレスは俺に任せておけ」と力強く誓いを立てると、「じゃあ、最後にこれが俺がこのリングの上で直接できるあんたへの恩返しだ。みんな棚橋さん、あんたの声を聞きたがってるぜ」とマイクを渡した。

 大歓声が発生すると、棚橋は「おい、辻。岐阜だぞ。俺の記念の大会だぞ。負けた状態で何を言えって言うんだよ!? まあ、喋りますけどね」と苦笑しつつ、「辻、改めてあの日、自由が丘の駅でお前と出会えたことを本当によかったと思ってる。ただ、プロレス界に誘ってしまった。辻の人生に変化を与えてしまった。俺はしっかりと責任を果たすつもり。だから、辻! 新日本プロレス頼むな」と辻にエールを送り、握手と抱擁を交わした。

 棚橋は観客に視線を向け、「そして、久しぶりの岐阜大会。たくさんのご来場、本当にありがとうございました。25年間、本当にたくさんの応援をいただきました。改めてありがとうございました。そして、僕は岐阜での試合が今日これで最後になります」と改めて報告。感極まった表情を見せながら、「つらいいことも苦しいこともあったけど、俺は岐阜出身を誇りに思うし、プロレスラーになってよかったです。というわけで、勝って言いたかったけど、最後に言わせてください。じゃあ、最後に岐阜の皆さん、愛してま〜す!」と拳を突き上げた。

 棚橋は辻の手を掲げて勝利を祝福するが、感動ムードをぶち壊すように現れたのが、岐阜出身で、棚橋にとっては中学の後輩にあたるIceだった。辻と入れ替わるようにリングインしたIceは「おい、試合後、悪いな。ちょっとてめえら耳貸せや。ここまで来るのによ、クソほど時間がかかった。クソみたいな思いも、クソみたいなことも、クソほどしてきた。でもよ、何者でもなかったクソ野郎の俺がプロレス使ってここまで成り上がったぞ。棚橋弘至! 俺とタイマン張れ、コノヤロー」と一騎打ちを要求。「てめえ疲れたことねえんだろ。だったら来週の土曜日どうや? 隣の愛知県ならよ、岐阜県民のヤツらもようけ見に来れるやろ。どうや? やれんのか?」と11・8安城大会を舞台に指定した。

 棚橋も「おい、先輩やぞ? おな中の先輩やぞ? おい。まあな、でもかわいい後輩や。やったるからな。ちょっと待っとけ」とIceと同じく地元の方言を使って受諾。これを聞いたIceは「11・8東祥アリーナ安城でエースとIce、メインで押さえとけ。最初で最後のタイマンや。てめえの今まで一番怖え棚橋弘至を引きずり出して、一緒にプロレスハイになろうぜ」と言い放ち、棚橋とにらみ合った。

 日に日に引退が近づく中、激闘直後に早くも来週のシングルマッチが決定した棚橋。そんな逸材の前にバックステージで突然姿を現したのが外道だった。「棚橋さん、まだ引退試合の相手決まらないんですか?」と確認した外道は「もしあれだったら、あの……俺、用意しますから。言ってください」と意味深に発言。多くを語らずに去っていった。


【辻の話】「自由が丘の駅で12年前に棚橋さんに会って、月日が流れてやっとこの日が来た。でも棚橋社長、忘れないでくれ。俺の追い上げはレスラーが終わっても続くぞ。社長になったあんたにはもっと俺からの突き上げを感じてもらうつもりだ。でも、覚えておいてくれ。これが新日本プロレスなんだ。ほかの団体にはマネできない。12年かけて俺と棚橋さん、こういうストーリーを作ることができる。これが新日本プロレスなんだ。まあ、俺にこんなことを言われなくてもわかっているだろうけどな。さあ、あんたに言われたとおり、あんたに変えられたこの人生、全力で俺はあんた以上のレスラー人生を歩んでやるぞ。(※一旦控室へ向かうが、引き返して)忘れてた。ベストバウトってのは、シチュエーションが作るんだよな?」


【試合後の棚橋、外道】

▼棚橋「痛い、痛い……痛い……。(※フロアに座り込んで)活きが良いね……(※ここで突然、外道がインタビュースペースに姿を現し)ヘイヘイヘイ、何? 何?」

▼外道「棚橋さん、まだ引退試合の相手決まらないですか?」

▼棚橋「引退試合の相手はまだ決まってないです」

▼外道「決まってない……。もしあれだったら、あの……俺、用意しますから。ハイ。言ってください」

※と言い残し外道は立ち去る

▼棚橋「(※再び座り込んで)そっか……あらためて引退まで2ヵ月。まだ闘ってない選手もいっぱいいるから。自分の宣言したとおり闘いね、全員と。時間がないけど。それにプラスして引退試合の相手も近いうちに発表しないとね。やることが多いね。ただ、こうしてね、冷静に見て闘いたい選手がたくさんいてくれる。なんて恵まれたプロレスラーとしての生き方だったんだろうかっていう。振り返るにはまだ早いけど、最後まで全力で。ずーっと全力出して生きてきたから。動きが悪いとか、弱くなってるとか、そんなもんは全部、承知の上で受け入れて闘っているから。10あった力が6になっても、5になっても、それを全部出せば全力じゃないですか。マグレで10出るかもしれないじゃないですか。それは全力を出し切った人だけに起こる奇跡。俺は最後まで全力でプロレスラーを全うします」

――(リング上で)辻選手に新日本を託すようなコメントもあったが?

▼棚橋「ハイ。若い選手の未来ってのは、ホントに縛れないですよ。自分の可能性をね、挑戦するのも年齢にもリミットがあるし。後悔のないレスラー人生を歩んで行くことが、レスラーにとって一番だと思うんで」

――最後、ハイフライフローの前に“昔よく見た技"を出されていたと思うが、あの技は?

▼棚橋「え? あぁ……よく見てるね。まあファイヤーマンズキャリーのような形でね。おたがい団体が違って離れても、ライバルとして競い合った日々は消えないですからね。まあ、見といてよ。まあやるよ、ついに。2ヵ月しかないけど」

――あらためて今日の満員の景色はどうだった?

▼棚橋「岐阜産業会館がなくなって何年も新日本プロレス、岐阜でできなかったけど、こういったキッカケで、棚橋のラストイヤーで、岐阜で大会ができた。これはきっと来年、再来年、そして将来の新日本プロレスにとても大切な一日になったと思います。今日来た人、次また全員来てくださいね」

――(今日の)岐阜大会、プロレス史上最大の岐阜でのビッグマッチだと思うが、その舞台に立ててどういう想いがあった?

▼棚橋「そうですね、岐阜の偉大な先輩、橋本(真也)さんも……(※涙ぐみながら)見ててくれたんじゃないかと思うし、きっとお会いしていたら『おお、タナ! よう頑張ったな』って言ってくれてると思います」

【Iceの話】「オイ、俺の一番最初にできた野望。棚橋弘至にタイマンで勝つ。それが果たされる時が来たぞ。オイ、岐阜のフッドスターはよ、エースからIceに変わるってことを俺が(11・8)安城で証明してやるから。マジでHighだ。エース、来週楽しみにしとるからな。感じろ! Let’s get high! チッチッチッ! Big Up!」