【スターダム】決戦前に複雑な感情充満も「私が中野たむが辞めるきっかけになってやる」 敗者引退ワールド王座戦へ上谷沙弥インタビュー 2025/4/19

 年間最大のビッグマッチ4・27横浜アリーナ大会で中野たむと敗者引退マッチで対決するワールド・オブ・スターダム王者・上谷沙弥。かつての師匠・たむに対して「愛なのか憎しみなのか、まったく今、自分でもわからない」というほど複雑な感情が胸中に渦巻いてはいるものの、絶対の自信とともに容赦なく引導を渡すつもりでいる。互いのレスラー生命をかけた大勝負へ向けて上谷に今の心境を聞いた。


【上谷沙弥インタビュー】

――たむ選手からの希望を受け入れる形で4・27横浜アリーナ大会でのワールド王座と引退をかけた再戦を迎えます。受けて立つ立場の上谷選手がリスクを背負う必要はないと思うのですが、自らも引退をかけたのはなぜでしょうか?

▼上谷「そうだな。確かに中野たむが負けたし、私が引退をかける理由っていうのはまったくないし、こっちがリスクを負う必要っていうのはなかったんだけどね。中野たむとはデビューの時からずっとやってきて、いろんな舞台で戦ってきたけど、自分が今、赤いベルトっていうスターダム、プロレス界最高峰のベルトを持っていて、単純に中野たむが人生をかけて、引退をかけてでも挑戦したいって言ってきたことに対して、私もプロレスに今、人生のすべてをかけてやってるつもりだし、私にはプロレスしかないって思ってる。だから、プロレスに人生かけてるっていう一つの証明として、私もかけるって言ったし、中野たむがその気持ちで来るなら私だってっていうのがあった。来いよ、なんでも受け入れてやる、私もかけて最高峰の戦いをしたいなって思った」

――絶対的な自信の裏返しとも感じました。

▼上谷「そうだね。去年の年末の両国で赤いベルトを奪取して、その時も満員札止めだったし、そのあとの防衛戦、後楽園も満員札止めだったし、テレビ番組の『鬼レンチャン』なんかでも自分は結果を出して。プロレスの中と外、両方巻き込んで自分は今、プロレス界の中心にいると思ってる。そういう評価っていうのも自信につながってるし、自分自身が自分を一番信じてるから。負ける気は一切ないから、かけたというのもあるかな」

――上谷選手がワールド王者になってから、スターダムの上昇ムードに拍車がかかった感がありますが、その実感はありますか?

▼上谷「私のおかげだろうなって(笑) 私が去年の札幌でヒールターンをした時からスターダムの風向きが変わったんだよ。私自身がスターダムを変えてやろうと思った、そのちょっと前に分裂騒動みたいなことがあって、スターダムが落ち込んでしまった時期もあった。けど、私はもちろん最高峰の赤いベルトを目標としてずっとやってきたし、スターダムを面白おかしくしてやりたいっていう気持ちは誰にも、どの選手にも負けない自信があった。だからヒールターンをきっかけに退団マッチだったりとか、玖麗(さやか)を奪おうと企んでみたりとか、自分が引っかき回してる自信はあるかな」

――上谷選手にとって、たむ選手は特別な存在だったと思いますが、今はそのような感情は払しょくされていますか?

▼上谷「もともとは師匠、弟子っていう関係で、『たむさん、たむさん』ってずっと追っかけてやってきたけど、5★STARの開幕戦で中野たむとやって、自分のヒジの脱臼がきっかけで、どんどん中野たむとの関係が壊れてきた。最初は脱臼したのもあいつのせいだって思ってたし、憎しみだったりとか、引きずりおろしたいとか、メチャクチャにしてやりたいとか、ドロッドロな感情がたくさんあったんだけどね。こんなに執着してるのって、なんかもう大嫌いなのか、逆に好きなのか、愛なのか憎しみなのか、まったく今、自分でもわからなくて。『何だろう、このグチャグチャな感情?』みたいな。自分でも何がしたいのかもよくわからなくなってるぐらい、凄くメチャクチャでグチャグチャな感情。でも、やっぱり中野たむなんだなみたいなのが自分の中にあって。だから、こうやってお互い求め合って、ぶつかり合って、潰し合ってるのかなって。本当にこうやってできるのって今、中野たむしかいないし。愛なのか憎しみなのか、よくわからない感情から今、赤いベルトと引退をかけてっていうふうになってしまっているんだけど、負けるつもりは一切ない。けど、自分がもし引退したらって考えると、正直これから先、どうしたらいいかわからないし、怖さがないと言ったらウソになる。けど、それ以上にあいつをぶっ潰したい。しかも、それが横浜アリーナっていう大きな会場だし、引退マッチっていうのはたぶん4、50年前とか昔の昭和の選手がやってたかもしれないけど、この時代にやることで本当に伝説、歴史的瞬間になると私は思っていて。だから、お互いのすべてをかけた、この最高峰の戦いを絶対に見てるヤツらには見逃してほしくないと思うし、本当に身を削って、自分のすべてをかけて戦わないといけないと思ってる」

――たむ選手にどんな形で引導を渡したいですか?

▼上谷「そうだね。今までヒールターンしてからは死んだふりをしてスキを突いてたたみかけたりとか、H.A.T.E.に乱入させて勝ったりとか、メチャクチャな戦いをしてきたけど、やっぱり最後はセコンドの介入も何もなしで、二人だけの時間、二人だけの空間で戦いたいかな。誰にも邪魔されたくないっていうのはある」

――結果はどちらになるにせよ、お二人の戦いはこれが最後になります。

▼上谷「そう。泣いても笑ってもこれが最後だし、デビューしてから中野たむvs上谷沙弥は黄金カードって周りに言われてきて、ついにここまで来てしまったので。中野たむは私がプロレスを始めるきっかけになった人。だから今回は私が中野たむをやめさせるきっかけになってやろうかなって思ってるよ」